これは、神をも恐れぬトリックスターの記録である。

 この物語は、ズーという「祭りの神」についての記録である。
 海の民たちは、万物に魂が宿り、神々がいると信じていた。では、彼らにとって「祭りの神」とはいかなるものか? 祝祭の神? それとも饗宴の神? いや、どれも違う。ズーはトリックスターで、神をも欺いた一人の青年の姿をした神だった。
 神話では海の龍が、自分の鱗を材料に物作りを命じるところから始まる。まずは海の龍の眷属の龍と、次に人間に、それを命じた。これを競わせている最中、食事の時間を取ることになった。人間は仲間がいて、すぐに食事を終えた。しかし眷属の龍には仲間がおらず、体も大きかったので、食事が遅れた。その隙に、人間は命令を遂行してしまう。眷属の龍はショックのあまり自害し、それを見た海の龍は自責の念にかられた。
 そんな中登場したのがズーだった。ズーは龍の鱗をこねて、人間と同じものを作った。そんなズーを気に入った海の龍は、自分の庭に住むようにズーに勧めたが、ズーは他の眷属からの嫉妬を受けて、出奔する。そこからズーの神をも恐れぬ旅が始まるのだが……。

 果たして、ズーがトリックスターと呼ばれる所以とは?

 是非、御一読下さい。

夷也荊さんの他のおすすめレビュー1,172