6 私のこと、忘れないで。
私のこと、忘れないで。
お願いだから、……私のこと、忘れないでね。
二人が公園の前を歩いているところで、空から雪が降ってきた。真っ白な雪。十二月の冷たい雪が、二人のいる世界の上に静かに降り続いていた。
「寒いと思ったら雪か。確かそんなこと、天気予報で言っていたね」空を見て照は言った。
「おお。本当に降ってきた。雪だ雪。ねえ、照。雪が積もったらさ、一緒に雪合戦しようよ? 楽しそうじゃない?」にっこりと笑ってネオンは言った。
「やだよ。寒そうだし。それに東京じゃ、雪合戦ができるほど雪は積もらないよ」と照は言った。
照が言うと、ネオンは小さな子供みたいに両方の頬を膨らませて不満そうな顔をした。
「じゃあ、もし積もったら?」
「積もったら?」
「そのときは、一緒に雪合戦してくれる?」ネオンは言う。
「うん。いいよ。もしも、雪が積もったらね」そんなことは絶対にないと、思いながら、照は言った。
「『約束だからね』。絶対だよ」
にしし、と笑ってネオンは言う。
「わかった。『絶対の約束』だ」優しい顔で笑って、照は言った。
……お願い。私のこと、……思い出して。誰かがそんなことを、雪の降る東京の空の下を歩いている二人を見ながら、(悲しそうな声で)そう言ったような気がした。
さよならの約束 雨世界 @amesekai
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