008 宿命—Fate—Ⅱ
担任教師の江川が挨拶を返した。
江川は、海斗たちの女性担任教師であり、身長は女性にしては一七〇センチと高身長で、髪は背骨くらいまで伸ばしている。
「今日は皆に転校生を紹介します。冬野さん、入ってきて」
と、挨拶を終えた後、いきなり転校生の紹介をし始めた。
「はい‼」
返事と同時に教室の前の扉がゆっくりと開いた。
見覚えのあるような声、棘があるようで、寒気がする。
教室に入ってきた少女は、昨日とはまるで雰囲気の違ったあの忌々しく、憎たらしい性格は何処かにかき消したかのようだった。
腰の位置まで髪を伸ばしており、北高の女子制服を着用している。
それは猫をかぶっている少女だった。
「今日からこのクラスに転校することになりました
明るく、可愛らしく挨拶をする。
すると、クラスの男子共が、美少女が自分たちのクラスにやってきた事に喜びを感じ、声を上げていた。
だが、その中で一人の男子だけが違う思いをしていた。
それが『海斗』である。
昨日の事を忘れたわけではない。
人間ではない人間が、人間界のそれもごく普通の何もない高校へと転校してきたのだ。
悪魔が人間界の学校に転校してくるなんて、アニメや漫画でしか見たことが無い。
よく考えると、彼女は一体どこに住んでいるのだろうか。
そして、戸籍などはどうしているのだろうか。
問題点が色々とありすぎて、ついていけない。
「それじゃあ、冬野さんは……」
と、江川は開いている席を探し、窓側の一番後ろの席に座っている海斗に目が止まった。
「冬野さん、一番後ろの男子の隣でいいかな?」
「はい、分かりました」
————はぁ⁉ なんで、そうなるんだよ‼
海斗は、心の中で叫んだ。
瑞姫は返事をして、教卓を降り、後ろに座っている海斗の方へと歩み寄っていく。
「よろしくお願いします」
「あ、ああ……」
笑顔で挨拶する瑞姫に対して、海斗はがっくりときた表情で挨拶を返した。
「ねぇ、海斗君。知り合いなの?」
前の席に座っていた愛歌が振り返って、海斗に話しかけてきた。
「知らねぇ……」
と、海斗はため息交じりにそう答える。
「ふーん、そうなんだ……」
「そうだ。ほら、前向け……話が始まるぞ」
海斗は右手で前後ろに手首を動かしながら、愛歌を前に向かせた。
————なんで、俺の隣の席に座っているんだよ。
と、視線で瑞姫に訴えかける。
「? 何か、問題でも?」
「とぼけるなよ。なんで、テメーがここにいるんだよ……」
「説明はしっかりとするから、それまで大人しくしてて‼」
「ちゃんと話してくれるんだろうな?」
「するわよ!」
二人は小声で会話をしながら睨み合う。
————め……面倒くせぇ‼
海斗は、疲労感が溜まっていくのを体で感じながら一時間目が始まろうとしていた。
× × ×
放課後————
瑞姫はクラスの女子から誘いを受けるが瑞姫はすべて断り、現在、海斗と屋上で春風に打たれながら話をしていた。
「それで、なんでお前がいるんだ?」
「瑞姫よ」
「は?」
「今日から名前で呼びなさい‼」
「まぁ、それはいいが……って、結局、何なんだよ‼ 早く、説明してくれ‼」
瑞姫は自分を名前で呼ばせようとし、海斗は説明を求めてくると、噛み合わない話をしている。
グラウンドでは、部活動生たちの掛け声が聞こえてくる。
「どこから話しをしようかしらね……」
Re:Different ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ @kouta0525
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