第2章  宿命—Fate—

007  宿命—Fate—

『死ねぇええええええええ‼』


 と、旧悪魔が海斗に襲い掛かってくる。


「うわぁああああああああああああ‼」


 大声を上げて、勢いよく飛び起きた。

 戦いから翌日の朝の事である。

 悪夢にうなされて、朝から汗がダラダラと流れているのが分かる。


「くそっ……。変な夢を見ちまう……」


 海斗は、顔に手を当てながら辛そうな表情をしていた。


 ————結局、昨日のアレは何だったんだ?


 未だに昨日の事が嘘かのようにあの後の事はよく覚えていない。


 ————そう言えば、いつの間にか、勝手に体が動いていたんだよな。


 海斗は、制服に着替えながら登校の準備を始めた。


 北高————


「ふぅ……」


 と、朝七時から登校を終えた愛歌が、ぐったりとしていた。


「どうした、どうした。朝からの自転車こぎで疲れちゃったわけ?」


 前の席に座っていた涼音が、後ろを振り返って話しかけてきた。


「だって、早すぎるんだもん。それにこの高校の坂、どうにかならないの?」


「なるわけないでしょ。運動しなさい。運動を————」


 涼音は呆れていた。


「そもそもこの高校自体が山の上にあること自体、あんたも知っていたことでしょ。もう一年経っているのよ。慣れなさい」


「え——」


 愛歌は不服そうにする。


「それにしても七時十分だっていうのにクラスの半分も来ていないって、遅刻でもしたいわけ?」


「いやー、こんなに早く学校に来るのは私達くらいだよ、涼音ちゃん……」


「あ、そう……」


 涼音は愛歌の返答に納得し、小さく欠伸をした。


「そういや、馬海斗と筋肉馬鹿は? 来てないの?」


「うんん。見てないよ。いつも三十分くらいに来るよ。どうして?」


 愛歌は涼音に問う。


「あいつ、昨日、勝手に早退していたでしょ? それで朝から呼び出し喰らっているはずなのよ。一応、昨日、あいつの親には連絡しておいたんだけどね」


「へぇー、そうだったんだ」


「いや、あんたも一緒に先生の話を聞いていたでしょうが……」


 天然ボケの愛歌に涼音は軽くツッコミを入れる。


「あ、そう言えば、江川先生がカンカンになっていたね」


「そうよ。あいつは今日を持って終わりなのよ。終わり……」


 涼音がそう言うと、


「アホ。ちゃんと今来たんだよ。オメーが昨日、しつこく電話してくるおかげで朝っぱらから起きていない体を起こして、来てやったんだよ」


 と、眠そうな顔をした海斗と朝っぱらから元気いっぱいの秀次が登校してきた。


「あら、来てたのね」


 姿を現した海斗を見て、涼音は少し苦笑いをした。


「来てるも何も俺にも一応、それ以外にも用事があるしな」


「海斗、俺は先に行っているからな」


「ああ……」


 秀次は、すぐに荷物を椅子の上に置くと教室を後にした。


「ねぇ、他の用事って何?」


 愛歌が海斗に問う。


「まぁ……いろいろだ。そんじゃな」


 海斗も続いて教室を後にした。


「ねぇ、何だと思う?」


「さあーね、私が知るわけないでしょ」


 涼音は、窓から入ってくる冷たい春の風に当てられて、寒気がした。



     ×     ×     ×



 朝のホールルーム————


「起立、礼‼」


「「「おはようございます‼」」」


 委員長の号令でクラス全員が担任に向かって挨拶をする。


「はい、おはよう」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る