第24話 御前会議

アーノルドとグレイスが再び街に行こうとしている頃、王都では御前会議が開かれていた。

出席者は国王と宰相、五大貴族のみの極秘会議だ。


「レイセオン伯爵よ、まだ火のヒュージゴーレムは見つからぬのか?」

「はっ、陛下。今に至るまで見つかっておりません。やはり例のゴーレムが火のヒュージゴーレムだったのでは無いでしょうか?」

「レイセオン卿、あれはグレートゴーレムの大きさだったと聞いておりますぞ?」

「タレス卿の仰る通りですな。動き出す前ならともかく、既に動き始めたヒュージゴーレムを易々と討ち果たせるはずはありますまい」

「まったくですな、メラーラ卿。レイセオン卿がまだ見つけておられないだけでは?モンスターラッシュの直後に禁呪をも上回る極大魔法が使われたという噂も聞いておりますぞ。火のヒュージゴーレムの仕業ではありますまいか?」

「ラインメタル卿、あれ程の大きさのものが暴れまわっていればレイセオン卿も見逃すはずはありますまい」


議題に上っている属性ヒュージゴーレムとは、百年に一度、魔王の封印が弱まった時に五大貴族の領地付近に発生する巨大なゴーレムの事だ。

いや、正確に言うならば、発生する場所の付近に五大貴族を配置し、脅威に対処できるように対策しているのだ。

属性ヒュージゴーレムの強さは圧倒的であり、まともに戦えば担当貴族の全軍がほぼ壊滅にまで追い込まれる程なのだ。

従って、通常は完全に動き出す前に発見し破壊する事になっている。


「皆の者よ、ミツジュウ侯爵の言う通りだろう。既に時は多く残されておらぬ。火の聖騎士を出立させるか否かを決めねばなるまい」

「陛下、いつでも準備はできております。ただ、今後、火のヒュージゴーレムが発生した場合を考えますと・・・」

「ならば、火の聖騎士候補であった二名を遣わそう。それで良いか?」

「ありがたき幸せにございます」


属性聖騎士は、国王直属の聖騎士の中でもその属性能力が非常に強力な者が選ばれる。

属性ヒュージゴーレムを倒すには同じ属性の強者でなければ困難な事から、発生時期が近付くと国王の元から五大貴族に対応する属性聖騎士が派遣されるのだ。

そして、属性ゴーレムを倒した後は、魔王再封印の為の加護を受けるために出立する事になっている。

その道中は長く険しく非常に危険な事から、余裕を持って十か月もの期間を割くのが伝統となっているのだ。


「皆の者も分かっておろうが、魔王の再封印に失敗すれば人の世は終わる。たとえ何があろうとも加護を受けた属性聖騎士を無事に王都まで送り届けるのだ!」

「御意」


人類が圧倒的な支配者として君臨していた旧文明は、魔王の誕生により崩壊した。

この時代よりも遥かに強力な軍事力を誇っていた旧文明でさえ、総人口の99.9%を失う程の総力戦を展開して魔王を封印するのが限界だったのだ。

もしも再封印に失敗すれば、今度こそ人類は絶滅する。

それ故に、百年に一度の魔王再封印は、絶対的最優先事項となっているのだ。


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御前会議は終了した。

今は国王と宰相のみが残っている。


「ふぅ・・・」

「陛下、どうなさいましたか?」

「悪い予感がする。火のヒュージゴーレムが現れぬなど今までに無いことだ」

「火の聖騎士は優秀と聞き及んでおります。加護を受けられれば再封印は問題ございますまい」

「強さの証を立てずとも加護が授けられると思うか?」

「古き言い伝えによれば、証は必ずしも求められる訳ではございません」

「その通りだが・・・一度滅びかけておるのだぞ?」


魔王再封印は最初の数回は危なげなく行われてきた。

その結果として分業体制、つまり属性ヒュージゴーレムを討伐する者と加護を授けられに赴く者を別々にしていた時代があったのだ。

これは効率化を図ったというより、加護を受けた者が間に合わなくなるリスクを低減する処置であった。

しかし、人の欲は深い。

魔王再封印の名誉を求めて、選抜時には純粋な強さの他に序列も考慮される事になっていったのだ。

その結果、実力不足の者が加護を授かり、危うく魔王再封印に失敗しかけるという事件が発生してしまった。

それ以来、選考基準は再び厳格化され、強さのみが求められる事となった。

同時に、属性ヒュージゴーレムを討伐し、その強さの証を立てなければならないとも定められたのだ。


「陛下、此度の火の聖騎士は歴代の中でも一二を争う強さとの評判でございます。あまりご心配なされずともよろしいかと存じます」

「ならば良いのだが・・・聖神様、我らをお守りください」

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最強の普通一種冒険者 筋肉があればなんとかなる 九尾希理子 @9tails-Chirico

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