エピローグ
無事に退院した二人は再び学校に通い出した。るーとはあれから会えていない。担任の女教師から親の急な転勤で遠くへ行ったとだけ知らされた。それについて宗一は何か言いたそうだったが、結局何も言えず、全てをりーなにゆだねてくれている。
りーなはるーにスマホを使って連絡を取ろうと思い、何度かメッセージを送ったが、返信は無く、既読のサインすらつかなかった。住んでいるところも訪ねてみたが、連絡や行き先がわかるようなものは何もなかった。ただ、置き手紙は、消えること無く残っていたので、それをりーなは大切にしまっている。
りーなの父は娘の学校登校再開を見届けると東京へ帰っていった。後に、北山に政府の調査隊が派遣されたが特に成果は無かったようで、第二陣が結成されたという話は無い。この地方都市はいつもの静けさを取り戻している。
りーなと宗一はそれぞれ夜は違う夢を見るようになった。そして二人はぎこちないながらもつきあいだした。といっても昼食を共にするとか、部活帰り、一緒に途中まで帰宅するとか。そう、宗一は部活に入ったのだ。陸上部期待のホープ。それが今の宗一だ。
そしてりーなも変わったことはあった。宗一の下校時刻を待つ間、宿題を片付けがてら図書室に通うようになったのだ。冬になったら図書委員会に立候補しようと思っている。
りーなはいろいろなことを学びたいと思った。学校で教わることはもちろん、それ以外のことも。それがるーとの再会に一番早い方法だろうと直感していた。自分たち地球人と、るー達異星人のレベルが等しくなるか、近しくなれば、るーとは自ずから出会えるだろうと直感していた。
それは科学に限った話では無い。人の考え方やものの見方、触れ方や感じ方を変える必要があるのかもしれないし、それがどのようなことさえ、まだりーなには、いや地球人にはわかっていない。
本当に、いつになるかはわからない。けれどいつかたどり着く――それを思うとりーなの心は少し暖かくなった。図書室で本を閉じ少しの間、祈るように考える。
そしてその時こそ。
その時こそ、胸を張って。
るーに会いに行くのだ。
あの笑顔にりーなは、会いに行くのだ。
りーなと宗一の夢冒険 陋巷の一翁 @remono1889
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