帚星と別れた夜

「もう少しすると、地球と月の間を小惑星が通過する」


 妙な形の帽子を被った気障な男がバーの隣の席で言った。気障な男だがここで見かけたときには話をする。そんな距離感の男だ。


 この日の夜は満月であり、月との間を小惑星が通過すれば宇宙空間に降り注ぐ太陽の光と、それを反射した月の光で照らされてさぞや明るく輝き長い尻尾を見せるだろうと男は続けた。


「へえ、長い尻尾か。それは楽しみだ」


 反対側に座っている男が言った。


「バカなことを言うな。小惑星は石の塊だ。氷の塊の彗星とは違って尻尾など出るものか」


 なんだいがっかりだなと言うと、変な帽子を被った気障な男が大丈夫だよいつかまた会おうと言って帰って行った。


 暫く飲んだ後バーを出ると夜空に長く青い尻尾を持った帚星が飛んでいた。


 空から青く光る物体と他の何かが落ちてきて、少し先のLEDがいとうの下でパチンとはじける音がした。


 LEDがいとうの下へ行き足元を見ると帽子と青く光る薄荷の飴が砕けて落ちていた。バーで飲んでいた気障な男は彗星だった。帽子を拾い埃をはらってからバーに戻り帽子を眺めながら薄荷のカクテルを飲んだ。


 ーーーーーーーーーーー…


 では皆さん!夜空を眺めて月や星に思いを馳せてみてください。不思議な夢を見られるかも知れません。

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六十一秒物語 (習作) 柏堂一(かやんどうはじめ) @teto1967

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