彼等の終わらない鬼ごっこその行方は

とても丁寧な筆致で、乾いた小さな世界を
淡々と描く。
 彼等のヒリつく様な孤独。逃げても尚、追い縋って覆い尽くす永遠の孤独を恐れて
更に又、逃げている。

夏の終。あの賑やかで明るい季節は移ろい
秋へ、そして冬へと。季節が移ろう中で
白く切り取られた世界の中で。

彼等の永遠とも思える 鬼ごっこ は、
一人の少女の参入により揺るがされる。
少女も又、白い匣の様な日常に囚われて
いる。深々とした世界の中で。

それは、僥倖を齎すのか。それとも瓦解を
齎すのか。

 この作者の描く物語は、とても小さな
それでいて非常に大きな世界を以て展開
されて行く。
 幼気な頃の、そして思春期になる頃の
この世界の 不可解さ に気付いた
瞬間の絶望と希望とを淡々と紡ぐ。

作者の書庫には他にも沢山の、魂を震わせ
共鳴する様な作品がある。
 打ち明ければ『吸血鬼の学舎』について
紹介しようかと思っていたが、それは又
別の機会に。

この作品と作者に出会えた事は、

   僥倖である。