北陸の、とある地方都市での物語。
高校で国語を教える主人公の元に、嘗て
ミステリー作家を目指し切磋琢磨してきた
旧友が訪ねて来た所から、既に何らかの
術中に嵌っていたのだろうか。
題名や煽りに反して穏やかな文章で物語は
着実に進んでゆく。余命幾許もない旧友は
唯一の心残り として或る依頼をする。
充分に息を詰めさせて魅せる怖いホラーで
ありながら、ミステリーとして並走する
もう一つの本流がある。それは時に交差し
主導権を交代しながら結末へと流れ込む
その、巧緻さ。
それだけではない。
その土地に伝わる不気味な伝承や、戦時中
非人道的に行われた人体実験の不完全な
負の遺産。長閑な地方都市の鄙びた風景の
中に忽然と現れた 謎の洋館 其処に
隠された悍ましげな秘密の数々。
物語を構成する様々な要素への拘りと
整合性への妥協のなさ。
そして、周到さ。
まさに本格的なホラーでありミステリー。
最後にこの 奇怪な状況 への種明かしが
成されるものの…
本当に、そうなのか?
凄いものを 読まされた 気がするのは、
果たして自分だけなのだろうか。