これは作者のドキュメンタリー風…という
解釈が正しいのかすら曖昧になる、作品。
【 試読版 玉紫 】『玉紫 ‐ 藤尾瑛臣綺譚集』
この小説の中から抜き出して来た怪異譚を
纏めた掌編の数々…つまり、
これは『作中作品』なのである。
もう、この時点で相当に凝った創りである
事はお察し頂けるだろう。
いち手法としてメタを使う小説数あれど、
この作者の創作は、余りにも用意周到
且つ、文章や文脈の それ自体 が各々を
補い合うかの様に振る舞う。
妖しく美しい世界観も相俟って、それは
いつの間にか脳髄から絡め取られて行く
不穏な愉悦を齎すのだ。
明治から大正時代の風情を思わせる端正な
文体と、嫋やかで儚くも強かな想いを
秘めた作品の外にある 彼等 の在り様。
本当に作品に情熱を注がねば出来ない
丁寧で耽美的な物語の仕掛けに、きっと
幻惑される事は請け合い。
今回、敢えて『作中作品』を紹介するが、
必ずやこの作品が生まれた背景を知ろうと
思うだろう。