明かり、聖なる者

スヴェータ

明かり、聖なる者

 女は、いくつもの人生を狂わせていた。ある時は奇病にかけ、またある時はあっさりと銃殺。おかしなものと共存させたり、はたまた惨い殺しをさせたこともあった。


 特に女が執心するのは愛、信仰、戦争。女はこれらがただストレートに語られることを嫌い、いつもぐにゃりと歪めてみせた。


 女は愛し合う男女がただ幸せになることを許さなかった。示した道の先に置いたのは異常な執着、不幸なすれ違い、死による別離。それでも女は満足しない。女は、捻じ曲がった愛を「美しい」と考えていた。


 また、神を正しいものだと強調し、かえってその絶対性を揺るがした。女にとって宗教や神は正しさと絶対性の象徴。信じる、信じないの世界に人生を預けられない女にとって、それは決して手に入らないものだった。


 さらに女は、軍人たちに不本意な道ばかりを歩かせた。その結果、死にたくない者は死に、讃えられたくない者は讃えられ。誰一人として救われなかった。地面に横たわる軍人たち。女はその上に立つと、大義名分とばかりに「これが戦争よ!」と叫んだ。


 これだけのことをしたにもかかわらず、女は誰にも裁かれていない。法律は、女の一連の行動や主義主張を罪と見なさないのだ。女は10ではきかない数の人生を狂わせ、一部はその挙句に殺している。それでも、合法。何者にも取り締まることはできない。


 女は言う。私が世界を歪ませるのは、この世界が歪んでいるからよ。それを元に戻しているだけ。私はみんなに「正しい世界」を見せているだけなのよ。


 それで、もし「正しい世界」を見て、純粋さに魅力はないと思った人がいたのなら、私がここで奇妙な話をし続けた意味があったというもの。歪め直して見える「正しい世界」は、この世界における純粋さとは比べ物にならないほどに魅力的だから。


 ……ああ、哀れなる女よ。自身の人生こそ「奇妙な短いお話」であり、「1話完結」であることにお気付きか。己の所業を顧みずとも構わない。しかし、決して「正しい世界」などないということ、肝に銘じておいでだろうか。


 女は、どうやらこれらのことを分かっているらしい。しかしそんなことどこ吹く風。また1つ、奇妙な物語を書き上げたようだ。この世に生を享けて四半世紀が経ってもなお、この歪んだ性癖は正されそうにない。

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明かり、聖なる者 スヴェータ @sveta_ss

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