後編:エンドロールで泣く女

 月光は2,000万円のカネが貯まるまで待つ気持ちは失せた。事業計画を作って融資申請を梶沢法律事務所が口座を開設している銀行に提出した。


 事業計画書には『シアター moon light』というロゴが記されていた。


「月光さんがミニシアターの経営とは・・・」

「センセ。今時『副業』がないと、終身雇用が崩れ去った世の中では生きてけませんからね。弁護士だってもはや万能の資格ではありませんし」

「映画、好きだったんだ?」

「誠実に、人間的正義を貫いているこの世で数少ないメディアのひとつですからね」

「こけら落としの上映は? もう決まってるの?」

「はい」


 月光は事務所の窓を開け、ビルの隙間にかろうじて浮かぶ月を見上げて梶沢に告げた。


「『レオン』です」



FIN

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

属性:正義を気取る女 naka-motoo @naka-motoo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ