誰にでも優しい人は、きっと、誰かにとって時に残酷だ。きっと、優しいだけではなく、強さを持っていることが必要なのだ。そう感じさせてくれる一作。
主人公は心優しい転校生。東京から転校してきたことで、転校先に馴染めるのか不安だった。そんな主人公と、仲良くなった一人の少女。しかし彼女はクラスでイジメにあっていた。そのことを知らされた主人公は、少女を避けてしまう。
しかし、決定的なイジメの場面を目撃した主人公は、ささやかながら自分で前に一歩踏み出す。空気を読んで、他人に合わせて、それで平和ならそれでいい。自分が一人になっても、他人に嫌われなければいい。そう思い、常に何かに怯え、イジメも傍観者になろうとした主人公。しかし、ちょっとの勇気が、強さに変わる。その瞬間を、その過程を、リアルに描いた作品だ。
是非、御一読下さい。
通い慣れた通学路を照らす淡い夕日。
おだやかであたたかい黄昏色の中で、
「今日一日の自分を全部燃やしてしまいたい」
そう考えたことが何度かあります。
傷ついた。傷つけた。
嘘をついた。嘘になってしまった。
積み重なった小さな失敗に立ちゆかなくなり、
もう二度と学校になんか行きたくないと肩を落とす。
皆さまにもきっと、そういったご経験があるのではないでしょうか。
教室の中にすし詰めにされた雛たちは、
常に協調と同調を求められています。
しかし雛たちは、生まれながらに知っているのです。
誰しもが平等ではなく、決して分かり合えない相手もいることを。
遠い日の私たちがそうであったように、知ってしまっている。
出口のないその賢しさは、時に「いじめ」となって現れます。
しかもその多くは、大人たちの目を擦り抜けている。
パッキングされた教室では、部外者になるのが難しいのです。
少なくとも私がいた教室ではそうでした。
一人残らず全員が、常に加害者か被害者に属していました。
我が身は可愛い。我が身は可愛い。我が身が可愛かったがために。
潰してしまった友情がありました。
殺してしまった笑顔が、そこにありました。
だからこそ今日の自分を、「全部燃やしてしまいたい」と願いました。
この物語では、そんなありふれた鳥かごの中の一つを覗くことができます。
擦れて傷つけ合う雛たちの、誰一人として悪者ではない物語です。
どうかその結末に、夕やけ色が微笑まんことを。