第27話


翌日は城下町の進行具合を確認しに来たクーロたちは温泉街で売るための歩きながら食べられるグルメの試食をしに来ていた。


「これがオンセンマンジュウか、ふむ、うむ」


もぐもぐと口を動かしじっくりと味わうクーロ。

一緒にエスドとシィと人間の意見もということでディアーヌとアロイヴ。

そして、獣人の意見もということでココと両親、そしてココの友達である狼族の子供も3人ほど一緒に来て試食をしている。


ココたちは子供の視点の意見も欲しいということで、大人ばかりの意見では一緒に来た子供達が暇をしてしまってはかわいそうなので子供でも楽しめるグルメを開発するためだ。


「うん、うまいな!!しかも出来立てというのもいい、で、そっちの時間の経った方はどんな感じなんだ?」


蒸かしたての温泉まんじゅうと、お土産用の温泉まんじゅうをクーロたちは食べ比べる。

どちらも甲乙つけ難いぐらい味は良くできている、ただ、出来立てを食べれる贅沢はやはり温泉街に来たからこそのものだろうなという話になる。


魔界にはいろんなものが流れ着いてくる。

その中にはレシピ本なども含まれていて、そのレシピ本の中から食べ歩きに向いている料理を選んで、実際にどの料理を販売するかということになっているのだが、その料理のうちの一つに子供たちが目をキラキラさせながら見入っている。


「リンゴアメという料理ですね」


かじってみてくださいねと以前から魔族領にいるホブゴブリンの料理人が、

溶かした飴にリンゴという果物をつけて乾かした食べ物だと、ただ、リンゴがないのでそれに似た果物にしてあるのと、子供向けには小さめの果物に飴をつけてあると説明をする。


子供達はそれぞれのリンゴ飴に齧り付きあまーい!!と喜んでいる。

果物は完熟する直前の少し甘みを控えたものを、代わりに飴はしっかり甘いので甘いだけではないので一個は簡単に食べきれるように工夫をしたとクーロたちに説明をし、クーロも子供達が食べているものと同じものを食べて、これはいいな、採用とする。


温泉まんじゅう、リンゴ飴を始め、さまざまな料理を試食していくなか、クーロは温泉饅頭を、エスドとディアーヌはソフトクリームを、シィとアロイヴは焼き鳥を、子供達はリンゴ飴にカップアイスを、ココの両親は肉まんを気にいる。

それぞれどれも美味しいということになり、試食の料理の殆どが採用となる。


あとは同じ料理を同じ場所で売るのではなく、配置を考えて温泉街の全体で買えるようにするということと、ゴミに関してはゴミ箱を各所に設置するという話で決定をする。


「ところで、リンゴアメはまだ作れるか?」


クーロが料理人に聞けば、すぐに作れますよと返事をするので子供達のお土産用にいくつか準備をしてもらう、その間に温泉街の進行状況を確認をしようということになり、温泉街をみんなで歩くことにする。


温泉街のメインストリートとなる場所は日本の和風のような建物に立て替えたり、外見を変えたりして、まさに日本の温泉街となっている。

イメージしてもらうとすれば、例えば京都の清水寺や、四国の金毘羅さんの参道をイメージしてもらえればわかりやすいかもしれない。


そして、メインストリートの各所に日帰り温泉施設も準備して、それぞれの温泉は柑橘湯や薬草湯など違いがあり、スタンプラリーができるようにしてある。

スタンプラリーの用紙が埋まると記念品と交換できるようにしてあり、温泉街から少しはなれた場所にも温泉施設を用意してあり、集めるスタンプ用紙の枚数により、記念品も豪華になっていくということにしてあるので、一回だけ楽しむのではなく、何回でも楽しめるようにしてある。


一回きりだけ来て終わり、ではせっかくの温泉施設の意味がない。リピーターが増えてもらわなければということだ。


見たことのない建物に、施設に驚くばかりのディアーヌたち。

それに対して、魔族領の技術はすごいだろう?と胸を張るクーロとエスドとシィ。


温泉街の準備もほぼ終わり、あとは実際に客を呼び込んだ時にどのように対応するかということで領外に出ている魔族たちに声をかけデモンストレーションを行い、どのように改善をするかということを詰めていくということで決定する。


試食の会場へ戻り、子供達へのお土産のリンゴ飴を受け取り、魔王城への戻る一行。

帰路の途中でココの両親やディアーヌやアロイヴ、子供達の感想を聞きながら、賑やかに戻る一行に、途中、温泉街で作業している魔族から、これも持って帰りなとお土産を度々もらう。


魔王城に戻り、住居スペースへ行き、子供達にリンゴアメを配り、今日の業務は終了とうことで解散となる。


クーロとエスドは感想や情報をまとめるために執務室へ、シィは部下に指示を出すために自らの執務室へ少しだけ仕事をするために移動する。


シィが部下に指示を出すのはデモンストレーションを行うために、魔族領の外にいる魔族へ連絡を取るためだ。


魔王城の接客練習の客相手の実践もそろそろ行わなければなと、クーロは考える。

王侯貴族に対して、どこまでできるのか、そしてそれにふさわしいのはだれかと考えた時に、思い浮かぶのは初代魔王。

クーロのご先祖様で、現在も存命している。


面白いことが好きな初代魔王だ。喜んで協力してくれるだろう。

ただ、初代魔王がまだ存命しているということは、魔族には周知の事実だが、今回、採用した者たちは知らない。

ので、驚くだろうなぁと、考えるクーロであった。





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おいでませ!魔王城湯治村 七三 @shithimi73

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