最終話 君の笑顔を守りたい

「デジャヴってるのか? なんじゃこれは。ありえないぞ。リクを誰かと間違えておるのか」


 驚いた表情の妖精さん。

 テレパシーが使えない今、返答することができない。デジャヴってるってなに⁈


「って、あれ。そうじゃないか。あっ、えーと。すみません。今の間違いです。それで、……どちら様ですか?」


 間違いたってなんだ?

 なにかが……おかしい。


「最側……なのか?」

「はい。最側ですけど。表札を見ての通りです」


 ドアから体を半分だし、表札を指差すと「馬鹿なんですかぁ?」と、言いたげな表情をされた。


 最側っぽいと思う他、なかった。

 初対面でこんなにも生意気な奴なのかと思うと、それはたぶん違う。


 何処と無く俺に気を許しているような、そんな雰囲気が伝わってくる。


「そういう意味じゃなくて、あの日のこと、前の世界の記憶があるのか?」


「……前の世界?」

「そうだよ。バイト仲間だったろ?」


「……やっぱり、そうなんだ。……夢なら良かったのに」


 肩を落とすように、落ち込みながらボソッと言った。聞きたいことが山のようにある。でも、落胆する最側を見ると、言葉に詰まる。


 あの世界は、最側に取っていいものではなかった。そう思うには十分過ぎる表情だった。


 過去に戻ったからと言って、手放しでは喜べない。不安が勝る。かつての俺がそうだったように、きっと、いまの最側も不安なんだ。


 〝バサッ〟


 だから俺は抱きしめる。

 ありったけの想いをこの両手に乗せて、優しく抱きしめる。少しでも不安を取り除けるように。


 関わらないことでしか幸せにできないと思っていた。でも、それは違った。いま、この瞬間の最側が抱える不安を取り除けるのは……俺だけだ。



「大丈夫だよ。未来は変えられるんだ。俺が必ず、幸せな未来に導いてやる。だからなにも心配することはないんだ」


 最側の体からスッと力が抜けるのを感じた。


「先輩、格好付けたいのはわかりますが、女子中学生にいきなり抱きつくとか、事案発生してますからね……。でも、ぷにぷにしてて柔らかい。おデブちゃんの温もりってやつですか」


「ははっ。そうだよ。おデブちゃんの肉厚はあったけーんだぞ!」


 守りたい。この減らず口を。

 

 明日も変わらず、笑顔で減らず口が叩けるように。これからもずっと、毎日。


「あっのぉ〜、ちょっと汗臭いので、もう離してください。ご・め・ん・な・さ・い」

「やなこった! もう、絶対に離さない」

「……セリフまで臭くなるとは、先輩、さすがです。でも……」


 そう言うと、最側の両手は俺の背中へとまわってきた。


 ──そして、ギュッとされた。


 それは最側なりのOKサインのような、そんな気がした。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


〜〜後書き


ここまでお読みいただきありがとうございました(__)

本編はこれにておしまいといたします。


振られはしたけど、ギュッとされたことでOKなのかなと少し曖昧な感じではありますが……。


後々、最側視点であの日あの時、どんな気持ちだったのかを振り返るようなお話を一話だけ書こうかなと思ってます。


〜〜わたしは先輩のことが嫌いだ。大嫌いだ〜から始まり、あんなことやこんなことを振り返る。〜〜そうして目が覚めると中学三年生に戻っていた。


こんな感じのやつです( 'ω' )و

視点変更や物語を閉じるのに不慣れなので、まだまだ先になるとは思いますが……。


 ◆──◆


ここまでお付き合いいただきありがとうございましたm(__)m

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優しさだけでは付き合う事が叶わなかったので、別の方法で口説く事にしました♪ おひるね @yuupon555

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