2 出会い
「西側は被害甚大だね」
メットは城壁の上から王都の惨状を感情の乗らないまるで他人事のように言った。
私は内心穏やかでいられなかったが不快感を表に出さないよう意識した。
「ヒトミ様、とりあえず城に参りましょう。メット殿も一緒に来ていただけますか?」
「俺は今から城壁の修復とかするんで別行動にしよう、ヒトミ様それでよろしいでしょうか」
「わかった、そうしましょう」
私はメットに了承の意を伝えると従者のワワに先導され城に向かう。
「ヒトミ様、現在王都の民と城の結界は……」
「ねぇワワちゃん」
「はい、どうかなさいました?」
「私は王位継承しないわ、お兄様もこの国に戻れない。ノア王家は断絶し、もうあなたと私に主従関係はない」
「はい、わかっています。私は私の意志で王女ではないヒトミ様の従者になりました」
「民の事も城の事も次の王が決めればいい」
そのまま私たちは会話もなく王城に入り、その日は休むことになった。
私は自室のベットで横になり、メットの言葉を思い返した。
「無謀な復讐の旅」
お父様と王国軍の精鋭が聖剣使いに
不死なのか?どうすれば勝てたのか?果たして私に勝ち目があるのか。
「聖剣使いを殺せるかはあなた次第だけど、俺が与えられる最強の力セーブとロードをあげるよ。使い方は王都に帰ってから説明するから」
初めてメットに会ったときに言われたことの中で聞きなれない言葉があった。
私は目をつむり「セーブ……ロード」と呟くと光に包まれ、意識が遠のいた。
○
「この方が賢者メット」
大きな黒いウサギの上に全身真っ白な男があお向けになって寝ていた。身に
天使ラズが私にちょっと待っててと言いながらウサギに近づく。
「久しぶりねノリコ、メットと少しお話したいんだけど」
ラズ様はウサギと顔を見合わせると。
「こちらはノア王国のヒトミさん、えぇ……そう王族の方よ」
時折相槌をはさみながらウサギと会話している、ウサギの口は動いているが鼻息のような空気が漏れる音しかしないため会話の内容は分からない。
「ヒトミさんこっちに来て、メットを起こすわ」
私がメットの頭を両手で固定するとラズ様は魔法で指先に水の球を生み出し、それを鼻から入れる。
「ぶっっっう!! おぇ……なにこれ」
餌付いているメットを見ながら、天使がこんなことをして大丈夫かと思った。
「おはよう、メット久しぶり」
「目が開かないから、誰かわからん。名前教えて」
メットは眩しそうに薄目でラズ様を見ながら肩を回し痛そうに呻いている。
「ラズよ、魔法嫌いは相変わらずね。とりあえず顔くらい洗って」
ラズ様の魔法で作った水で顔を洗い、身だしなみを整えるメット。
「回復魔法を使えば眠気も体の汚れも吹き飛ぶのに何故水を使うのですか」
私が尋ねると。
「それは俺が被っているコイツが神器で魔法を弾くからさ、まぁ属性魔法は効くんだけど……」
メットは頭に被っている白い兜を指さし、私を見て驚いた様子でこちらをじっと見ている。そこに先ほどのノリコと呼ばれた大きなウサギが駆け寄りメットの耳もとで何か言っている。
「あ~なるほど、やっぱり王族か。分かった、ノリちゃんありがとう」
メットは私に近寄ると跪いた。
「王女ヒトミ様、お目にかかれて光栄でございます」
「面を上げて下さい、今日はあなたにお願いがあって参りました」
臣下の礼を取るメットを立ち上がらせて袋から黒い棒を取り出す。
「あなたが作ったと聞いています、これの修理をお願いしたいのです」
「俺は材料を提供しただけでこんな
先ほどと様子が変わり、どこか投げやりになって答えるメットに苛立ちを覚えながら諭すように反論する。
「あなたはある条件を満たした女性の頼みを断れないと聞きました、違いますか?」
メットはうんざりした様子でラズ様を見つめる。
「その通りだよ約束だからな、でもその
メットは私にノリコの後に続くよう促すと。
「勝手にロードしたな」
私にしか聞こえないように耳元で囁くとこちらに見向きもせずラズ様のもとに駆け寄る、問いただそうと思い呼び止めようとしたところで有無を言わさずノリコの耳で脇から持ち上げられ移動せざるを得なかった。
この後の話し合いで一度王都に帰り、聖命剣の材料を得るため世界樹のもとへ向かう事が決まった。
苗床男と木刀姫 多感な漢 @hayakao
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