Gem Stones
紫吹明
序章 おとぎ話
むかしむかし、まだ人間たちが不思議な力を使っていたころ。世界には、GEMと呼ばれる特別な石がありました。
色とりどりでピカピカ光って、とても綺麗な石。それだけではありません。GEMが特別なのは、そこに妖精さんが宿っているからなのです。
人間だったものは、ハーミット。GEMの中で生まれたものは、ファータ。不思議な力を持つそれらの妖精さんは、気に入った人間を見つけると喜んで契約を結び、そのお手伝いをしました。ハーミットとファータのおかげで、人間たちはおいしいものを食べ、安心して眠り、たくさん子を産んでどんどん栄えていきました。
ところが。繁栄し強くなった人間は、さらにさらに欲望を深めていきました。
たくさん土地がほしい。働きたくない。嫌いなあいつを困らせたい。人間たちの村に、次第にそんな願いがあふれるようになりました。一人が願えば別の一人が負けじと願う。そうして願いはどんどんふくらみ、ついにはどうしようもないほど膨れ上がってしまいました。
そうなっては大変です。契約を結んだGEMは終わらない戦いの中で、契約を拒んだGEMは怒った人間の手によって、次々と砕けていきました。GEMが砕けてしまえばハーミットもファータも生きていけません。たくさんいた妖精さんたちはほとんど姿を消してしまいました。
そうして、周りを見ても妖精さんの姿が見えなくなった頃。人間たちはようやく我に返りました。けれど、もう遅いのです。消えてしまった妖精さんは帰ってきません。
悲しい戦いを生き延びた妖精さんたちは、世界中に散り散りになりました。自分たちが当たり前のようにそこにいたからいけなかったのだ。人間に簡単に手を貸したからいけなかったのだ。深く後悔した妖精さんたちは、それぞれの場所で眠りにつきました。
そして今も。いつかまた綺麗な人間のお手伝いができるまで、妖精さんたちはどこかで眠っています。
――これは、そんな妖精さんたちと人間の話。
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