4月7日 日記

 入学式だった。

 菜々人に会った。夢かと思った。でも、現実だった。

 菜々人がトラックに轢かれた。横断歩道の青信号が点滅していたからトラックが信号無視をした、はず。

 僕は目の前でそれを、見て、菜々人の血を、触って、菜々人に触れて。


 菜々人は僕のことを大嫌い、と言って目を閉じた。でも、その顔は笑顔だった。


 小学生の頃、父親からのDVに逃げるようにこっそり引っ越して、新しく過ごした場所でどうしてたかは知らないけど。なんで頑張って生きてきた菜々人がここで死ななきゃならないのかわからなかった。

 だから僕はその瞬間に世界を憎んだ。運命を憎んだ。不幸と幸福は同じくらいに調整されているなんて言葉があった気がするけど、それだったら菜々人はこれから幸せに生きていかなきゃいけないはずなんだ。こんなのは間違ってる。


 気づいたらケータイが近くにあって(カシャンっと落ちる音がしたのでまさか空から降ってきた?)、やけに鳴り響くもんだから出てみた。相手は神様とか名乗る男だった。

 僕が願った願いは神様のお眼鏡にかなったらしい。

 神様と名乗る男は救済措置と言って菜々人を救う運命を提示してきた。そんなの、従わないわけがない。


 菜々人を救うためならなんだってしてやる。菜々人が幸せになるためならなんだってしてやる。


 要約

 ・菜々人が死ぬと(どんな要因であっても)時間がその日の朝まで巻き戻される

 ・僕は菜々人が死んだ瞬間までの1回目(菜々人が死んだ運命線を1回目とする)の記憶を持ったまま朝まで巻き戻される

 ・僕はその記憶を頼りに菜々人を救わなくてはならない

 ・チャンスは一度きり。2回目で菜々人を救えずに菜々人が死んでしまった場合はどういう状態になるのかわからないが僕も死ぬらしい。ゲームオーバー

 ・副作用として菜々人は死ぬ運命に引き寄せられやすくなってしまう。だから一度救えたとしても油断ならない

 ・期限は3年間。高校の卒業式の日に菜々人は死の運命線から解放される。

 ・菜々人にこの話をしようとしたらひどい頭痛に襲われてしまったので人に話すことはできないらしい。手助けはなし


 こんなところだろうか。また何かわかったら追記していく。


 …この3年間を無事に終えることができたら、僕は菜々人に告白をする。これは決意だ。

 これから3年間、この日記を続けることができることを祈る。

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