ZERO
@InueSippou
第1話 この世界ができるまで
西暦3200年の未来の世界。
この世界は、100年前に起きた戦争の終結と共に生まれた。
過度とも言える物の生産に、その物を作るのに必要な世界の資源量は足らなかった。その減りは凄まじく、科学者が予想した資源量が無くなる年よりも数十年は早かったと言われていた。物が作れなければ、収入は得られない。国々は頭を抱えたが、貧困となる自国の惨めさに耐え切れずに戦争を起こした。
その戦争を経験した人によれば、どの種の生物よりも多いヒト科の生物が絶滅危惧種になったほどだったそうだ。とにかく、それほど酷く、誰もが終わりがあるとは思えなかった戦争を止めたのは、1人の科学者だった。
科学者は『コア』と呼ばれる、電気や水や火などの多くの資源とエネルギーを永久的に生める結晶体を作り出した。そして、アンドロイドの設計図も用意して、人口が減った世界の助けになるアンドロイドを作った。
戦争の元となる資源が戻り、減った人口を補うアンドロイドが普及したことで、世界は急速に発展していった。
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5万人収容の闘技場。観客席は埋め尽くされ、会場の中心に位置する、石で出来た円型の舞台に向けて、大観衆の歓声が送られていた。
「さぁ!!始まりました!小学生高学年の部の中間試験、全国アンドロイドバトル!日々鍛えたアンドロイドの技術を、世界の子供たちが披露するぜ!実況は5年4組の担任兼イケメン体育教師、イマイがお届けだぁぁぁ!!」
舞台で対峙するのは2人の子供、そしてどちらも形状の違うアンドロイドを連れていた。
子供は耳たぶにつけたピアス型のボタンを押す。耳から鼻、そして反対の耳まで薄い黒色のサングラスが現れる。そのサングラスは、見る先のアンドロイドを認識すると状態をサングラスに表示する。基本は攻撃・防御・スピードの数値、そして分かる範囲の使える能力を表示する。人々はこうした、アンドロイドの状態を管理し、サポートする人間を『メカニック』と呼ぶ。
アンドロイドと共存する時代が始まって100年。アンドロイドの能力をどんな状況下でも生かせるようにメンテナンスし、必要なプログラムと装備を与える能力は、今の人間にとって必須だった。そのため、学校の授業には必修科目として登場したのだが、時が経つにつれてこうした大会を開く娯楽が登場した。メカニックは、自分のアンドロイドに指示をプログラムコードにし、それを無線で送信することが出来る。そしてコードを送信する小型装置はグローブなどの小物に入れて、『コード』と言うだけで送信することが出来る。
睨み合う2人の子供は指示内容を選択し、アンドロイドに向けて叫ぶ。
「ロード!!!!」
プログラムは2進数の『0101001010』という、人間の文字では認識できないコードをアンドロイドが読めるコードに変換される。そのコードは、不透明度の低い細い光の帯を高速に描いてアンドロイドに向かう。コードはフラフープのようにアンドロイドの周囲をグルグルと回転する。その回転が最高値に達した瞬間、その輪を縮めてアンドロイドと一体化する。
アンドロイドは一瞬の発光後、先ほどとは違う形状になり、武器を持つ『バトルモード』へと変形する。2体のアンドロイドは主人の指示に従い、剣や銃などで戦いを始めた。
その戦いで火花が散れば、一層大きな歓声が響く。
これが、戦争が起きてから出来上がった今の世界だった。
ZERO @InueSippou
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