後日談

いい感じに物語は一段落したが、残念なお知らせが一つあった。


この世界は何をするにもお金がかかる。もちろん、破壊されたツラヌイの機体からだにも。

つまり何が言いたいのかというと、


ツラヌイは数百万する機体からだの弁償で借金背負っているのである。


(一応会社も保険をかけていたので数百万円まるごと請求……ということにはならなかったのだが、ツラヌイは19歳。大して金を持っていないので足りなかった。親に頼るのも気が引けた。そういう年頃なのだ)


そこで一人と一柱は返済への一助として、伊吹大明神の力を使ったお守りの制作を会社に提案したところ、上層部は案外ノリノリになったので制作することになってしまった。

制作するのはもちろん言い出しっぺの一人と一柱である。


「つらぬいぃぃ、疲れだぁァあぁ……」


そこは会社の物置き部屋。一人と一柱は手作業でお守りを作っていた。

伊吹は相当余裕がないようで、珍しく「ちゃん」を付けてツラヌイを呼ばない。


「いやオマ……違った、いぶきちゃんがいないとお守り作れないし……。というか二時間しか経ってないんだからもうちょっと粘ってくれ……いやください。もう5日目だし」


お守りは小さな袋にそれっぽい名前を書きこんだボール紙、それに伊吹が呪い(のプラスマイナスを逆転させたモノ)をかけるとお守りの完成。

伊吹いわく、呪いと祝いは紙一重なのだとか。

亡霊もまつり上げれば神様になるみたいなモノなのかねぇ?とツラヌイは適当に納得していた。


「いやもうムリだよというかわたしはいままで働いたことないのにいきなり働かさせるとかおかしいというか不敬なんだようあと何時間働けばいいんだようというかまってまってわたしは人間じゃないから労働基準法むしされるんじゃあ……!?」


そんなことを言いつつもボール紙に呪いをかける作業は止めない。身体はすっかり作業を覚えたらしい。

ちなみにツラヌイはそのボール紙を小さな袋に入れる作業をしている。

伊吹が呪詛を吐き出していると、三鬼みきが大きなガラス瓶を持って部屋に入ってきた。


「おつかれー。給料代わりの大吟醸だいぎんじょう持ってきたよー」

「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉっしゃあああ!!」

「キャラ崩れてない?というか、なんでいぶきちゃんは死因にもなった酒を飲み続けてるんだろうか……」

「それだけ好きなんでしょ。あ、そういやお守り追加発注だって、なんか売れてるみたーい」

「「うぎゃあああぁあぁああぁぁぁあぁあぁぁあ!!」」


そんなこんなで、ぎゃあぎゃあ騒いで彼らは元気に過ごしていた。



……ネット通販限定で『マジで効果がある』謎お守りがあると話題になり、会社の知名度と売り上げが上がったのだが――それはまた、別の話である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

信滅異界戦争 ヨウゲツ ゾンビ @zombi08

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ