꧁激うま料理バトル『天使の舌舐めずり』カレーの章終局꧂
負け犬アベンジャー
勝負の行方は……
「この勝負、満場一致で挑戦者の勝利!」
「ば、馬鹿な! 俺の至高の一皿、ハッピーハッピーカレーが敗れるなどありえない!」
「確かにチャンピオンのカレーも素晴らしかった。まず色合い、七色のコントラストを産み出すために七つの色のルゥを七つの別々の鍋で煮込み、混ぜずに並べる繊細さ。口に運ぶ前に目で楽しむ、実に素晴らしかった」
「加えてテレビ映りも考えーたカレーは、チャンピオーンたらめーる、かんぺーきなものなのーですた」
「香りも素敵だったわ。ルゥから立ち登るガラムマサラのハーモニー、それだけでも大変なのに妥協せずに、スパイスを丸めて具にして、揚げ餃子の具にしてある。それを噛み潰すたびに口の中で爆発してまるで、香水を食べてるようでしたわ」
「まさに、香りの大爆発やー!」
「……具についーてもうひーとこーと、サクサクころもーは噛めばリズムを奏でーる。心地よーいものでー」
「まるで、具材のオーケストラや!」
「…………もうよろしいかな?」
「あ、はい」
「ライスの方にも一工夫ある。一見すれば全ては同じに見えるが、実際は新米、古米、古々米、恐らくは七年分の米をブレンドし、舌触り、のど越しに変化を産み出している。細かな気遣いも素晴らしいものです」
「なら何故!」
「それはーね。チャンピオーンのカーレーには、肝心の【味】がなかったのーですた」
「当たり前だ! 今回の勝負は審査員が全員激辛フリーク、辛い料理を食べすぎて味覚を失った味覚障がい者ばかり! だから私は!」
「その気持ちはよくわかってるわ。だから視覚、嗅覚、聴覚、触覚、残る五感の内の四つに特化させた。でしょ?」
「その通りだ。そのために造り上げた至高のカレー、それがなぜあんな、無色透明な鼻水のような液体に負けるなど」
「しかし挑戦者には【味】があったのだよ」
「そうこれはまるで」
「失礼、今大事なところなので」
「あ……その、すみません」
「一見すれば挑戦者のカレーは至高とは程遠い、それどころか食べ物ですらない」
「香りーは市販の人ー工香ー料、ライスーもなし、このとろーみも、恐らくはただーのでんぷーんでしょう」
「そんな料理に!」
「そんな料理でも【味】があった、感じられたわ。それも喉を通って胃に通じるまで、しっかりと感じられた。これは味覚を失う前にも感じたことがない経験、本当に素晴らしかった。さぁ挑戦者ちゃん、そろそろ隠し味に何を使ったか、教えて欲しいわ」
「ソレハ、ピーーー、コチラデス」
「「「「「こ、これは!」」」」」
「な、なんだこれは?」
「結晶、かしら?」
「塩ーには見えなーい。氷ーでもなーーい」
「ま、まさかこれは!」
「ソウデス。コチラハガラスデス」
「いや、いやいやいやいやいや挑戦者さん。それはあまりにも」
「なるほどガラスの粉か! そもそも人の舌に【辛い】という味覚は存在しない。そう感じてるのは本当は【痛み】つまりは痛覚なのだ!」
「それを、このガラスを用いることでダイレクトに舌を、食道を、胃袋を、痛めつけることで味覚を再現したのか!」
「いやいやいやいやいや、みなさん。当たり前みたいに言ってますが、これはえらいことですよ。お腹の中ずたずたですやん」
「そうだ! こんな審査員の健康を害する料理など!」
「それがチャンピオン、君の敗因だよ」
「な、なにぃ!」
「私たちは激辛フリークよ?」
「辛さのためーなら、健ー康など、とっくーーの昔に捨ててるでーすよ」
「我々審査員の辛味への執念、覚悟、それを読み間違えたチャンピオン、いや『カレー風雲児』
「く、くっそーーーー!!!」
「なんじゃい! もうおわっとんのか!」
「あ、あなたは!」
「おう! わしゃ! 激うま料理バトル四天王第二の刺客! 『ハンバーグ皆殺し』
「ピーーーー、ヨロシクオネガイシマス」
「そして次の審査員はこいつらじゃい!」
「……老人、でっか? それも寝たきりぃに見えますが?」
「ピーーーカレラハ、ゼンイン、胃ろうシュチュチュヲウケテマスネ」
「そうじゃ! 口からまんま食えんから代わりぃに胃ぃに穴さあけて流動食を流し込めるようしとるんじゃ! こいつらに旨い言わせたもんが勝ちじゃ!」
「そんな、なんぼ至高の料理人言うても無理でしょ」
「ソレハ、ピーー、チガイマス。ニギヤカセヤクウルサイダケオワライゲイニンサン。ドンナオキャクサマニモ、ゴマン、ピーーーー、ゾクシテイタダケル料理ヲ、ツクル。ソレガボク、A machine that makes very delicious food fully automatedナノデス」
「その粋じゃ! さぁ勝負じゃ!!!」
꧁激うま料理バトル『天使の舌舐めずり』カレーの章終局꧂ 負け犬アベンジャー @myoumu
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