レベル3
『肉体強化』『光学迷彩』『爆破装甲』『付与:火炎』
肉体に複数魔法を付与する。相手が俺の速さに対応し、俺をどうこうできる筋力が有るのならこれで圧倒する。
使った魔法は先程同様の身体能力強化の他、光を屈折させて透明になる魔法、物理接触した瞬間にそこを爆発させて攻撃・防御する魔法、攻撃に火炎を付与する魔法である。
速さと筋力で勝てなくとも視力と防御力で勝てれば問題ない。
視界から消え、周囲を駆けまわってわざと音を出して混乱させる。
「さぁ、何処から攻撃するかなぁ?」
顔が歪んで笑いがこみ上げた。
間抜けは俺に気付かず、そこら中の音に反応してキョロキョロしてやがる。
「死にな!」
気付かない間抜けの脇腹目掛けて拳を叩き込む。拳の火炎が脇腹を焼き、その直後に目の前で爆発が起きた。殺った。上半身を吹っ飛ばされて生きているヤツなどいない。
「そこだ!」
次の瞬間、爆風の中から出て来た腕と剣が俺の顔面を捉えた
「!」
片手で防いだが間に合わずに派手に吹っ飛ぶ。爆破装甲が反応し、剣を爆発に巻き込む。
「何が!?」
確実にやったはずなのに、何故?
体中が悲鳴を上げる。隙を突くつもりがこちらが突かれた。
「全く、剣二本もダメにしやがって…。タダじゃないんだぞ!」
手の中で砕けだ剣を見て文句を言う。
脇腹に一回、腕に一回の大爆発を受けた。それであの余裕。どういうことだ?
いや、そんなことはどうでもいい。今重要なのはヤツの獲物が無くなった。ということだ。
どういう訳か奴は剣を振るう度に剣を砕いていた。その理由は不明だが、今奴は武器を持っていない。
「喰らえ!」
魔法付与をそのままに顔面目掛けて拳を振るう。狙いは目潰し。打撃に強くとも爆破と火炎の閃光は目を焼く。それからは俺のターンだ!
そう思っていたのに。
奴は何もない手に何かを握り、こちらに何かを投げつけた。
『外なる剣&煌めく剣』
目の前に剣が現れ、爆発した。
「が……、クソ、」
呼吸が苦しい。身体はそこら中ボロボロで歩くのも難しい。なんでだ?なんでなんだ?レベル1に52の悪魔のこの俺が為す術無いなど有り得ない。
「さぁ、野良悪魔さん。ここで退くなら見逃す。という訳で下がってくれ。」
ボロボロの俺に向かってそう言う冒険者。手には盾が有るのみだ。
「、ザ、けるな。誰が……」
痛む体を振り絞って声を出す。
「ふーむ…拒否権は無いんだけど?」
余裕の面持ちでこちらに微笑みすら向ける。畜生。舐めやがって。
しかし、その余裕はこれから悲劇を生む。
『火球』
身体の魔力を振り絞って火の玉を放つ。しかし、狙いは目の前の男じゃない。
「‼」
男は気付くがもう遅い。気絶している娘目掛けて火の玉が襲いかかる。
「ざまぁみろ」
最期の意地だ。俺を殺しても灰になった奴は戻らない。
「クソ!間に合わな……い事は無い。」
慌てていた筈の男の顔がまた余裕の表情に戻ってしまった。
『夢無き世界』
火球が娘にぶつかる前に急にしぼみ始め、消えてしまった。
「『夢無き世界』魔法を無効化する領域を作り出す対魔法使い魔法だ。知ってるだろ?」
知っている。魔法使いが最も嫌う魔法。『魔法殺しの魔法』として有名すぎる魔法である。しかし、この魔法は高レベル(・・・・)魔法使い(・・・・)しか(・・)覚えられない(・・・・・・・)筈だ。
「レベル詐欺しやがって…レベル1とか嘘だろ!」
「残念。それは本当。……さて、拒否権は無いと言ったのにふざけたマネしてくれたんだ。覚悟は出来てるな?」
「お前の経験値になるなんてまっぴらだが仕方な」
「勘違いするな。俺はレベルが上がらないんだ。お前を殺しても経験値になんてならない。お前が死んでも永劫の死があるだけ。」
背筋が凍る。悪魔の背を凍らせるような恐ろしいものなんてあったのか。
「だからお前は殺さない。ただ…痛い目には有って貰うぜ!」
その言葉を最後に俺の意識が消し飛んだ。
レベル1の勇者の伝説 黒銘菓(クロメイカ/kuromeika) @kuromeika
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