魔法を筆頭に「理外の力」がはびこるクリスタ王国。発生する事件に、他者の能力を明文化できる「真実の眼」を持つ王女の探偵が挑むファンタジーミステリー第一作。
軽やかでいて的確な文章に、するすると読み進めることができました。煩雑になりがちな特殊設定のルールについても簡潔にして十分な説明があり、頭を悩せることもありませんでした。
架空の世界が舞台ですが、「疑わしきは罰する」などその世界ならではの常識が随所に織り込まれており、リアルな感触を伴って物語に入り込むことができました。シリーズもの一作目ということで、王女とその探偵の関係も一つのテーマになっており、この二人のねじれた関係性は個人的に好物でした。今後の発展が楽しみです。
なにより、読者への挑戦状つきなのがうれしいです。もちろん、解決のための情報はすべてフェアに(しかも分かり易いように)提示されています。そして、解決編の流れるようなロジックもお見事。
気軽に楽しめて、しかもたっぷりとした読み応えのある一作だと思います。
舞台は魔法や吸血鬼、呪いが実際に存在するファンタジー世界のとある王国。
その国の王女がある狡猾な呪術師に呪いをかけられたため、解呪の条件について聞くために主人公は呪術師の住む街へ向かいます。
その街では呪術師は宿を営んで、宿泊する客に呪いをかけて自分の良いように利用するという悪辣な行いをしていました。
しかし主人公が宿泊した直後にその宿で殺人事件が起こります。彼女は解決のために奔走することになるのですが……。
ファンタジー世界ですと、どうしても世界観の説明が必要になり、推理についても魔法や呪いの設定が絡んできて複雑になりがちです。
しかし作者の方は上手く世界観を小出しにする形で物語を構成して、「魔法」「呪い」について説明しつつ、読者にもフェアな形で推理できるようにしています。
また悲しい過去を背負う主人公と王女の微妙な人間関係も、物語を引き立てます。
スムーズに最後まで読むことができました。