水の流れのように
水;雨
水の流れのように
すべては、静かな水の流れの中にある。
見えることがなく、気づかれることもない。
ゆるやかでいて、揺るぎない。
オレはそのようにして生きている。
今朝は気がつくと10歳の女児になり、泣きながら父親に犯されそうになる寸前だった。
このままいくとオレの穏やかな心情を乱されることになりかねないので、ギュッとしてやり、かつての妻の口調で「つらかったのね、あなた」と涙ぐむと、父親は顔をくしゃくしゃにして号泣し、なんども悪かった、悪かったと謝ってきた。
優しく撫で続けてやると、すうすう眠りこけたのでうんしょうんしょとなんとか抜け出し、服を着なおして、洗面所で何事もなかったように顔を洗い始めた。
オレは静かに、気づかれることもなく他人から他人に、不規則ではあるが服でも着替えるように乗り移ってゆく。
最初はドタバタもあったが、タイムラグなく記憶を把握できるのでそのうち演じるのに慣れてしまった。
抜けた後も記憶は当人の都合のいいように書き換えられるので心配はない。
今回のようなイレギュラーも起こすが、それもこれも静かな営みを侵されそうになった場合だけ。
ただオレは、息をするように何事もなく過ごしたいだけなのだ。
水の流れのように。
さて、今は、いったい誰の中だろう?
水の流れのように 水;雨 @Zyxt
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