第39話 空港での大論争
無事に北海道での期間を終え、僕は新千歳空港の温泉施設の休憩施設でリラックスしてくつろいでいた。
あおいさんとは、祭りの演技を見てから分かれて札幌に戻ってきた。
正直に言えば、踊りはお世辞にも完成度の高いとは言えなかった。
だが、ここまで練習してきた成果を踏みにじるのまで僕はひどいやつじゃない。
演技が終わって、トコトコとこちらへと駆け寄ってきたあおいさんに対して優しい頬笑みを浮かべて『お疲れ様、頑張ったね』と声を掛けてあげた。
あおいさんは嬉しそうに『えへへ』と照れていたが、正直心の中では全くときめきもしないし、もっと練習したほうがよかったんじゃない?とさえ思ってしまっていた。
その後、僕はあおいさんと別れて、車で夜道の北海道の高速を4時間かけてまた札幌市内へと戻った。
ホテルは空港近くの宿を取ってあったので、そこで宿泊して。今日は特にする予定が何もなかったので、チェックイン時間ぎりぎりまでホテルでゆっくりした後、空港に着いてからも温泉施設で温泉に使って、休憩室でこうしてTVを見ながらリクライニングを下げてくつろいでいた。
飛行機は夕方17時出発の便であるため、出発まであと2時間ほどあった。
何をしようかと考えていた時だった。
ふいにスマホの通知が来ていることを知らせるランプが点滅しているのに気が付いた。
僕はスマホを手に取ってホーム画面を開くと、通知はLANEからで新しいグループに招待されていた。
さらに、個人トークでちとせからメッセージが届いており、『グループ入って』というメッセージが来ていた。
僕はスマホを操作してグループに参加した。すると、すぐさまメッセージが届き、『今から本気で話すからちゃんと聞いて』とちとせからメッセージが届いた。
本気の話・・・なんだろう?すごい嫌な予感がする。僕の第六感が言っていた。
しばらくして固唾を飲んで画面と睨めっこしていると、長文の文章が送られてきた。
そこには・・・残酷かつ、僕の心を完全に蝕む内容が書かれていた。
『私は、似鳥のこと一切好きじゃない。顔も嫌いだし、匂いも嫌い。背中擦られるだけで寒気がするくらい生理的に受け付けられない。だけど、あおいの好きな人だから我慢してた。あおいは私にとって大切な友人だから。あと、あおいと私の情報共有するのやめてほしい。私が情緒不安定になったこと似鳥あおいに言ったでしょ?後日私から言うつもりだったから他の人からそうやってホイホイいわれるのは本当にやめてほしい。秘密話見たいに私のこと話すくらいなら直接私に言って』
端的にかつ明確に僕に対しての強烈な怒りとも取れるメッセージが届いていた。
なんだ?つまり出会った時から・・・初めてネットで出会った時から僕のことは全く対象になかったと?それでもって、あんな誑かすようなセリフをのうのうといっては他の男たちも一緒にただの駒として扱っていたと・・・
僕は自分がしでかしていたことが恥ずかしくなってきた。それと同時にやるせない怒りが自分の中に込み上げてくるのがわかった。
プルプルと震える手で必死に返信を打とうと思っていると、先にあおいさんからのメッセージが送られてきた。
『そっか、ちとせありがとう。正直に言ってくれて。ちとせのいいところはそうやってはっきり物事を言ってくれることだよ』
『私はあおいと似鳥に幸せになってほしいだけ』
『うん、ありがとう』
僕が返事する間にそのような会話がトーク内で行われていた。
ちょっと待て。ふざけるな…
いつ僕があおいさんと付き合うって言った?
確かにあおいさんのことをちゃんと向き合うとは言ったけど、付き合いたいとは一言も言っていない。
それに、この会話は僕に対する権限というものは全くなく。ただの弾劾裁判だ。
僕に今までの罪を謝らさせ、あおいさんと付き合えという強制的な力を使った脅迫だ。
僕はすべてが嫌になってきた。
だが、僕のいいところは本音を正直には言わず、相手をたてること…
それだけを守りつつ、皮肉めいた返事を返した。
『とりあえず、いいたいことは分かった。でも、今回は旅行中にあおいさんと会う約束してたし、ちとせのことを言わないといけないでしょ?だから、報告したってことは理解してくれ』
『別に本当のこと言う必要ないじゃん』
意味がわからん。自分は他の奴のこと他人に言いふらしている癖に、自分のことに関してはいうな?ふざけるな。てめぇはどこかの国の女王でもなんでもねぇ。ネットで少しモテるだけでいい気になってんじゃねーぞ?
と馬鹿正直に書いてちとせと行き別れしていった奴らは沢山いるのだろう。
だが、僕は紳士だ。そんな野暮ったいことは言わない。だけど、それ以上にちとせを傷つけるようなこと言うけどな。
『悪いけど、僕は申し訳ないけどあおいさんと付き合う気はないから。勝手にそんな風に思われても困る』
『いや、付き合えし』
『強制かよ』
『あおいのこと大事にしろし、私の友達傷つけるな!!!』
違う、ちとせは自分の理想的な世界を作り上げようとしているだけだ。
自分の思い通りに行かなくて、駄々をこねている子供だ。
『悪いけど、その人を好きになるかどうかは個人の自由だ。そんなことを頼まれて、受け入れるほど僕は優しくない。』
『はぁ!?意味わかんない!』
まあ人からちやほやされてきて、今まで恋愛に困ってこなかった奴には分からない心理だろうな。これは、経験をつんできたものにしか分からない。
すると、僕とちとせのトークにあおいさんが割りこんできた。
『そっか…似鳥君は私と付き合う気はないんだね?』
『あぁ…悪いけど、合ってみてあおいさんと向き合えるかどうか確かめたけど、僕には向き合えそうにない』
『そっか…わかった。正直に言ってくれてありがとう…』
そう最後に言い残して、あおいさんはグループラインから退会した。
『友達を傷つけたな、殺す。絶対に殺す!!』
ちとせは殺人予告を言い残してから、グループを退会した。
グループラインには、一人寂しく僕だけが取り残された。
これでいいんだ…
大きなため息をついて、僕はリクライニング席にもたれかかった。
◇
あれから2カ月が経過した。
ちとせとあおいさんのLANEはもうない。
両者からブロックされたからだ。
僕は今、新しい仕事を見つけて働き始めた。
働き始めると、色々と新たなものが見えてくる。
2カ月前の自分を殴りたいくらいに・・・
ネッ友恋愛 さばりん @c_sabarin
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。