第9話「Sugar and Mealー糖分と食事ー」
「あー、しんどかったあー」
合計40時間にも及ぶ解析と計算に脳内の糖分をほぼ吸い尽くされたカオルは演技を忘れて倒れ込んだ。
この体になり12日。もう慣れたと言うよりも諦めたというか。そもそも自身の体にはなぜか興奮しない。いやむしろ興奮したらヤバイのではないかと悟りを開きそうな自分がいるのだ。
どこかへんな扉を潜りそうになっていた。ある意味達観とはそう言う意味なのかもしれない。
「お疲れ様、明日には主機のメンテも終わるから漸く出航よ」
船での共同生活は想像していたよりも刺激が少ない。
そもそも個室があり、部屋がミリアと別である時点でお察しである。普通であればシャワールームなどでのラッキースケベなどイベントを期待するだろう。もちろんカオルも期待していた。むしろ望んでそのようなシチュエーションに飛び込んだ。
しかしながら、かくも科学技術の恩恵とは素晴らしいものだ。
完全個室化による生活空間の縮小。コンパクト化でボックス型のシャワールームであり、宇宙空間という不安定な環境で広い風呂場などそもそもが有り得ないのだ。
まあそれにカオルが気づくまで、いや理解するまで時間がかかったのは仕方がないだろう。
「そろそろ仕事しないとお金足りないし・・・ミリア、何か仕事あるの?」
仲間といえどカオルは見習いであり、仕事などは全てミリアが受けてくる。もちろん事前に説明はあるが突発仕事が多い世界である。
「うん、まずはこの子の慣らしのためにも運送をいくつか請け負ってきたわ。詳細は端末に送ってあるから後で確認しておいてね」
そう言うと日課であるトレーニング室に向かって行ったミリア。そんな彼女の背中を見送りながらカオルは自身の端末に視線を落とした。
「えっと、輸送の仕事が3件・・・・」
端末に表示されていたのはミリアが受注してきた仕事の詳細である。
傭兵業を取りまとめているところから降ろされる仕事であり、一般的な仕事だろう。しかしながら傭兵が運ぶ物は一般的な輸送会社が運ぶ物とは少し違う。
あまりにも高価すぎて運べないもの。一般人に見せられないようなものetc・・・・・
「あれ、1件目と2件目が同じところ・・・・中継運送かな?」
ここ最近学んだ事として運送においては複数の個所を中継して荷物を運ぶことがある。例えばA地点で荷物を受け取りB地点に向かう。するとB地点でも荷物を受け取り、C地点へと運ぶ。そしてそこで荷物を下ろすのだ。
「このステーションからC型コンテナ3つを惑星レリクスの中継ステーションまで運んでD型コンテナと交換。そしてD型コンテナをフェミリア星系まで?最終地点は遠いなぁ」
科学技術が発達する中で工業製品の同一規格化は必ずと言っていいほど重要である。非常に頑丈に作られている宇宙船は数十年で劣化するものではない。その為、古い船でも最新の機器を使用できるようにある程度の接続部の規格化が図られているのだ。
そもそも高額な宇宙船をそう簡単に買い替える事などできはしないのだ。
新規顧客よりも常連の方がお金を落とす。宇宙ビジネスでは当たり前となっている事である。
そんな中、規格化されているのは何も設備や機械だけではない。
輸送に使われるコンテナも規格が決められている。
20メートル四方のA型コンテナを始めとし、十数種類のコンテナの規格がある。それらは全て簡単に呼べるようにアルファベットにて呼称されているのだ。
「まぁ、燃料代は要らないし。かかるとしたら人間の食費か・・・・」
人間はいつの時代になっても食事を必要とする。それは生物としてごく当たり前であり、自然の摂理であるのだが科学技術の発展はそれらを凌駕するほどになりつつある。
そもそも
まあ、体の一部を
「あのオートサーバの原料って穀物らしいけど、3種類の穀物だけでなんでもできるなんてほんと科学ってすごいねぇ」
カルフラムには人工自動調理機であるオートサーバが搭載されている。
そもそも現代では生の食材を調理して食べるなどごく一部であり、ほとんどがオートサーバにて調理されたものが食されている。
そんなオートサーバの調理に使用されるのが3種類の
「ふつうに美味しいと感じるから不思議・・・」
ミリアと行動を共にして10日程。その間に口にした食事は殆ど船内のオートサーバで摂っている。料理のメニューに関しては殆ど知らない名前だったが、味は文句なしと言える程であり、肉などの料理でも遜色なく美味しいのだ。
「でもなんで穀物から肉が出来るんだろう?」
一度ミリアに聞いた事がるが、”知らない方がいい事も世の中にはあるのよ”と言われてからは怖くて調べられなくなった。
「さ、仕事、仕事っ」
また変なことを考え出す前に動こうと仕事を始めるカオル。美味しいのであればそれでいいではないか。そう考えるのだった。
彼方のレヴィアタン 織田 伊央華 @oritaioka
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