第3話 冒険者ギルドにて

俺達はニックに案内され冒険者ギルドに向かった。冒険者ギルドの中は、役所とほぼ同じだ。柱に椅子、沢山の受付窓口、違うところをあげると人が沢山いて混雑していることくらいだ。人口密度の差は20倍以上、と言えばなんとなく差が分かるかな?俺達は人垣を掻き分けて窓口へたどり着いた。

兄:「人居すぎだろ、何人いんだ?」

妹:「ここに来るまでは、早く着いたのに窓口に着くまで時間かかったね。」

ニック:「あぁ、まったくだ。」

全員疲れた様子だ。まぁ、あれだけの人の中を掻き分けて来たんだ。疲れて当然だろう。

受付の女性:「冒険者ギルドへお越しいただきありがとうございます。ご用件はなんでしょう?」

兄:「俺達の登録を頼む。」

妹:「お兄ちゃんと私の2人分で。」

受付の女性:「失礼ながら、あなた方に冒険者は向かないかと。」

まぁ当然だな。18歳と16歳がいきなり冒険者になりたいと言い出したら流石に止めるわな。

兄:「大丈夫だ。俺達はそこそこ強いからな。心配無用だ。」

受付の女性:「ですが…」

兄:「大丈夫だっていっているだろう。俺達はゴブリンくらいなら倒せるぞ。」

そこで辺りがざわめく。もちろん受付の女性やニックも信じられないという顔でこちらを見ている。

ニック:「おい、その話は本当か?」

兄:「本当だよ。証拠を持ってくるのを忘れていたが、余裕だったよ。て言うか、たかがレベル2のゴブリンくらいどうってことないだろう?」

その言葉、特にレベル2辺りからニック達の顔が曇っていく。

受付の女性:「え?レベル2?て言うことは、鑑定能力付きの称号持ち?!」

ニック:「おい、お前も鑑定出来るのか?」

兄:「あぁ出来る。というか「も」ってことはお前も鑑定ありの称号持ちなのか?」

ニック:「…あぁ、俺は門番という仕事柄、他人を調べることが多くてな。そんなことをしていたら神様から「解析者」っつう称号を与えられたのさ。だが、お前らに能力を教える気は無いぞ。あくまで教えられるのは鑑定だけだ。」

兄:「その口ぶりからして他にも能力がありそうだな。けど、これ以上の詮索はよそう。これ以上はプライバシーの侵害になるからな。」

ニック:「ぷらい、ば…え?なんだって?」

兄:「そんなことより登録だ!さっさと俺達を冒険者ギルドに登録してくれ。」

受付の女性:「え?あ、あぁ登録ですね。ゴブリンも倒せるぐらいなら大丈夫でしょう。では、2人分の登録料として銀貨4枚を頂きます。」

兄妹:「え?」

兄:「嘘だろ?俺ら一文無しだぞ。」

ニック:「はぁ、ほらよ銀貨4枚だ。」

そう言って受付の女性に銀貨4枚を手渡したニック。

兄:「お前、多分めっちゃお人好しだろ?」

ニック:「な、何故わかった?」

兄:「初めて会うやつにこんだけ親切にするとかお人好し以外の何者でも出来るのかねぇよ。」

妹:「けど、それでも親切にしてくださってありがとうございます。」

兄:「ったく、倍にして返すと言ったが、俺達にどんだけ払わせる気だ?」

ニック:「いや、そういう訳では……。」

兄:「いや、そこはないと断言しろよ。」

妹:「ははっ、ニックさんって面白いですね。」

ニック:「なんか、褒め言葉なのに褒められてる気がしない。」

受付の女性:「登録の準備が出来ました。カードに魔力を込めてください。カードには職業や称号等が載りますが、自分の意思で隠すことが出来るのでご心配なく。」

そこで不意に妹が動いた。

妹:「お兄ちゃん、ちょっと来て。」

兄:「え、何?」

妹:「私の職業って明かしても良いのかな?騒ぎになったりしないかな?」

兄:「もし、お前の職業を明かした場合100…いや、200%騒ぎになり面倒事に巻き込まれるな。」

妹:「うん分かった。絶対明かさない。」

兄:「それが無難だと思う。」

そこで受付に戻る。

兄:「すみません今後の活動方針について、話していました。これで登録完了ですか?」

受付の女性:「あの、まだ魔力を……。」

兄:「え?!あ、あぁすみません。念願の冒険者になれたので嬉しくてつい。」

そして俺はカードに魔力を込める。カードには簡易的な俺の説明が 書いてあった。名前、年齢、レベル、職業、称号が書いてある。さて妹の方は、

妹:「あのー、魔力ってどうやって込めるんですか?」

え?何言ってんの?魔力の込めかたが、分からないだって?あぁ、そういういえばゴブリンとの戦闘は2体とも俺がやったんだった。妹はまだ魔法すら使ったことがないな。

兄:「優衣、ちょっと来てくれ。」

妹:「なに?」

妹に軽く説明する。

兄:「いいか?俺達は地球から転移してきたが、他の人達からしたら俺達も普通に生きてきたこの世界、アルムの住人なんだ。多分、この世界じゃ魔法は使えて当たり前なんだろう。そんな中で魔力の込めかたが分からないとか異常なんだぞ。これからは言動にも注意しとけ。」

妹:「う、うん。分かったよ。気を付ける。だから、魔力の込めかた教えて。」

この時、俺の心の中はどうなっていたと思う?普段はなにかと俺を避ける妹が俺を頼ったんだぜ。最初は夢かと疑ったよ。妹が行った後こっそりガッツポーズをしたよ。(頬をつねった後でな。)

兄:「魔力の込めかたは、身体中をめぐるエネルギーを1点に集める感じだ。」

妹:「えねるぎー?」

兄:「分からなくても、とりあえず体力とかそういう感じのを集める感じ。」

妹:「?、まぁやってみる!」

この時誤算が2つあった。1つは、妹がやることは全力で取り組むこと。もう1つは、妹が加減を間違えやすいこと。

妹:「えい!」

とんでもない量の魔力がカードに込められていくことが分かる。

兄:「…っ?!やめろ!それじゃ魔力込めすぎだ!」

むなしくも忠告は遅かったようだ。カードは込めすぎた魔力によって爆散してしまった。

兄:「やり過ぎだ、加減をしろ。」

そう言って妹の頭にグリグリする。

妹:「ちょっ…痛、痛い痛い痛い痛い!」

グリグリグリグリグリグリ………。

妹:「痛いって言ってんでしょ!」

そこでやめた。

兄:「加減くらいしろ。」

妹:「したよ!………す、少し。」

兄:「少しの結果があれだよ!」

カード(だったもの)を指差す。

妹:「しょうがないじゃん。初めてなんだもん。」

兄:「はぁ、すみません。カード壊れまし……。」

ニックや受付の女性、周りにいた冒険者の皆さんが、全員口をあんぐり開けたまま呆然としていた。

受付の女性:「私、夢を見ているのかな?冒険者カードが爆散した?一体どれほどの魔力を込めたらそうなるの?」

やばい、目立っている。早急に立ち去らねば。

兄:「ニックまた今度、妹のカードを取りに来るよ。早速クエストを受けたいんだが、どうすればいいのかな?」

ニック:「あ、あぁそれなら壁にある掲示板に今受けられるクエストが貼ってある。」

兄:「ありがとう。受付のお姉さん、クエストを受けたいんだが出来るかな?」

受付の女性:「は、はい出来ますよ。」

兄:「どんなのがあるんだ?」

受付の女性:「ただいまのクエストでは、ゴブリンの討伐がおすすめです。」

兄:「よし、それを受けよう。」

受付の女性:「ありがとうございます。ギルドの仕組みについてお話ししたいため、クエスト終了後に少しお時間頂きます。」

兄:「分かった、優衣行くぞ。」

妹:「どこへ?」

兄:「ゴブリン討伐だ!」

妹:「もしかして……。」

兄:「もちろんお前が頑張るんだ。」

妹:「えーー、嫌だー。」

兄:「いいから。」

そう言って半ば強引に妹をつれて冒険者ギルドを出た。

兄:「さっきの草原に行ってゴブリンを狩るぞ。」

妹:「どうせ嫌だって言ってもつれてくんでしょ。」

兄:「当たり前だ。これは、お前のためでもあるんだからな。」

妹:「はぁ。」


草原にたどり着いた。約数十分ぶりだな。

兄:「さて、ゴブリンはいるかな?」

妹:「見た感じいなくない?」

兄:「………だな。」

全然いない。見渡す限り草だけだ。こういう時、ゲームみたいにマップがあれば凄く楽なんだけどな。

精霊:「その魔法は作成可能です。」

兄:「うぉ?!めっちゃびっくりした。あぁお前、まだ居たんだな。」

精霊:「私はあなた様専用なのでずっと一緒に居ましたよ。」

兄:「そうなのか。てか、俺の考えていること分かんの?」

精霊:「えぇ、ある程度なら。」

兄:「まじ?」

精霊:「はい。」

妹:「また精霊さんと話してんの?」

兄:「あぁ、ゲームのマップ欲しいなーって思ったら作れるって言われた。」

妹:「なにそれ、反則でしょ。」

兄:「俺の能力だから良いんだ。」

妹:「へぇ、そーなんだー。」

俺は妹の疑いの視線を華麗に受け流しながらマップの制作に取り掛かった。

兄:「精霊よ、本当に作れんのか。」

妹:「ちょっと無視しないでよ。」

精霊:「はい、魔法は作成可能ですが、どうなるかはあなた様のイメージ次第です。」

兄:「あぁ、頑張るさ。」

妹:「ねぇ、聞いてる?」

うるさいな。まぁ、この際ずっとスルーしとくか。さて、まずどうすれば良いんだ?

そう考えていると魔法作成の手順が頭に浮かんでくる。

ふむふむ、なるほどなるほど。よし、なんとなく分かった。さっそく作るか!

俺は目の前に魔方陣を作り出した。(魔方陣っていってもただの丸だけどな。)そこにマップの魔法に使う魔法の術式を描いていく。自分の魔力が広がるイメージとその魔力にぶつかった物を脳内に映し出すイメージ、さらに、魔力が物にぶつかっても通り抜けて半径1㎞位の球の形に広がるようなイメージ。これを融合して描き出す。

妹:「お兄ちゃんなにしてんの?」

兄:「便利な魔法作りだ。」

妹:「え?!魔法作ってんの?!さっきの言葉、半分冗談で聞いてたんだけど。」

兄:「全部本当の話だ。」

妹:「えぇ、反則じゃん。」

しかし、この魔法作成凄く魔力を使う。脱力感が半端ない。体感で7割は使ってるな。そんなことを考えていたら、ついに魔法が完成した。

精霊:「完成しました。魔法名は「永久発動型魔法オートマップ」です。ちなみに、このままでは魔力の消費量が1秒に5割という割合で減っていくので魔力消費を無くす術式を組み込んでおきました。」

え?今何て言った?魔力消費を無くす?いやいやそれは、いわゆるチートじゃないか。


この魔法についてはまた次回つっこむとしよう。それではまた次回。


妹:「今回長くない?」

兄:「いや、魔法作成のくだりであんなに長くなると思わなかったんだ。」

妹:「読者の皆さん長くなって本当にすみません。」

兄:「次回は、もう少し短くするよう努力する。」

妹:「それでは第3話を見ていただきありがとうございました。」

兄:「次回を楽しみにしててくれ。」

兄妹:「これで第3話を終わります。」

















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最強魔王な兄と落ちこぼれ勇者な妹 @maitake09

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