第2話 冒険開始!

歩き始めて数十分、人生初魔物と出会った。人の様な見た目、緑色の肌、子供ぐらいの背、何より鑑定能力による「ゴブリン」という名前、ゴブリンだ。完全にあのゴブリンだ。間違いない。しかも、ご丁寧に2体いる。2人で1体ずつ倒してくれ、ということだろう。

兄:「俺が先に戦って良いか?」

妹:「どうぞ、ご勝手に。あんなのと戦うなんて嫌だよ。」

兄:「いや、2体いるから結局お前も戦うことになるんだぞ?」

妹:「いやいやいや、そんなの嫌だよ!」

兄:「嫌だとか、そんなのいってる場合じゃないからな?」

妹:「嫌なものは嫌なの!私は戦わないからね!絶対だよ!!」

兄:「はぁ、とりあえず俺は行くからな。」

妹:「えぇ、待ってよ。置いてかないでよ。せめて近くにいて。」

兄:「おう!(やったぜ、妹に頼られてる!!)任せろ!」

妹:「なんでそこで張り切ってんの?」

俺はゴブリン目掛けて一直線に駆け出した。鑑定によるとゴブリンのレベルはどちらも2だった。レベル1しか差がないし俺には全ステータスupがあるから多分大丈夫だろう。まずゴブリンの内1体に目掛けてかかと落としを食らわせてやった。バキ、ボキ、ゴキ、そんな音を出しながらゴブリンの1体が死んだ。顔が首の中に陥没している。

兄:「弱っ!いくらなんでも弱すぎだろ!」

これでも人型の魔物なので手加減をしたつもりだったが強すぎた様だ。(ちなみにゴブリンの血は青色だった。)死んだゴブリンが鮮血を撒き散らしながらばたりと倒れた。正直グロい。これが人間だったら吐いているところだろう。だが、相手が魔物なのと俺の職業が魔王だということもあり、そこまで気分は悪くならなかった。職業様様だな。しかし妹はダメだったようで隣で「キャーーー」と、絶叫している。この感じだと、妹にもう1体の方のゴブリンはきついな。しょうがない、俺が殺るか。次は魔法を試してみよう。

兄:「おい、魔法ってどうやって使うんだ?」

精霊:「魔法は主に魔方陣を展開し、魔方陣に魔力を何の属性にするか、どの魔力を使うか、どこに撃つか、を決めて書き込み、作り出して使います。」

兄:「なんだそれ?やりにくそうだな。」

精霊:「そのことならあなた様の称号の能力に魔法効率upがありますので、思い描くだけで作れます。」

兄:「本当か?ありがたいな。」

俺はその言葉どうりに魔方陣を描き始めた。

使うのは火魔法、定番の「火炎球(ファイアーボール)」をゴブリンの右腕目掛けて放つように魔方陣を描く。何故右腕かというと、他の魔法も試してみようと思ったので威力検証がてらゴブリンをサンドバッグにしようと思ったのだ。目の前に赤色の魔方陣が浮かび上がる。それは、炎を纏いながら球へと形を変えていく。

兄:「くらえ!火炎球(ファイアーボール)!」

俺の放った魔法は狙いどうりゴブリンの右腕へと一直線に向かう。しかし、速度を調整していなかったので遅い。まるで、大阪のおばちゃんが運動がてらスーパーにのんびり向かうために乗っている自転車くらいの速度だ。すまない、例えが悪すぎたな。簡単に言えば本気じゃない走りくらいだ。まぁ、その程度の速度だからもちろん避けられた。次はしっかり速度も調整しよう。てことで、次は何の魔法を試そうか?いや、魔法を試すと言うよりイメージで威力が変わるか試してみよう。

兄:「次は、はずさないぞ。」

使うのは火魔法、燃え盛る炎をイメージしながら「火炎球(ファイアーボール)」を放つ魔方陣を描く。今度は時速100㎞近くの速度で飛ぶように魔方陣に描き足していく。

兄:「くらえ!火炎球(ファイアーボール)マーク2!」

さっきイメージありとなしで威力が変わるかどうか試してみようと言った。結果は当たりだった。イメージありとなしでは威力に超が付くほど差がある。さっきは球の直径が30cm程だったのが今度は1mを軽く越える大きさでゴブリンに迫る。右腕を狙ってしっかり当たったが、魔法の範囲が広すぎて完全に燃え尽きた。

兄:「うぉ?!威力すげぇな!格上相手にはこれを主体に戦っていくか。」

そこで、妹が安心した顔でその場に座り込んだ。

妹:「良かったー。私に人型のやつとか絶対倒せないよ。」

兄:「流石に今回は俺が倒したが、次からはちゃんとお前が倒せよ?」

妹:「えっ?!」

兄:「いや 、流石に俺一人では限度があるしお前が強くならないじゃないか。」

妹:「いいよ別に強くなんなくたって。」

ダメだ。もし、これから先妹が俺に戦いを全て任せたら確実に妹自身が危険になる。(それはそれで妹が俺を頼ってくれるからアリだが。)俺だって体は1つしかないので、四方八方から同時に攻められたら対処しきれない。そうならない為にも、妹には戦う方法を学んでもらいたい。

兄:「日本なら分かるが、ここは異世界だ。異世界で自分の我儘が通用すると思うなよ。せめて、俺がいなくても1人で生きていけるくらいには成長してくれ。」

妹:「……分かったよ。戦えば良いんでしょ?戦えば。」

やっと妹が分かってくれたみたいだ。この件は片付いたから今度は町を目指そう。実はゴブリンと戦っている最中に偶然町のような影が見えたのだ。

兄:「よし!なら次向かうのは町だな。」

妹:「何処にあるか分かるの?」

兄:「あぁ、さっきうっすらと見えたからな。多分間違いない。」

どうやら、全ステータスupのおかげで視力も上がっているようだ。


数十分歩いてようやく町の手前にたどり着いた。長かった。全ステータスupがあるとはいえこの距離はきついな。妹はもともと体力が無いので途中から背中を押しながら来た。(妹に少しでも触れる事が出来て叫びだしたかったのは秘密だ。)町に入ろうとすると警備員というか門番みたいな人が歩み寄ってきた。

門番:「ようこそエイス町へ、身分証を提示してくれ。」

不味い。身分証の存在をすっかり忘れていた。異世界ものは身分証提示がほとんどあるのに不覚にも思い出せなかった。さて、どうするか?

兄:「すみません、旅の途中にゴブリンと遭遇し、つれていた馬が逃げてしまい、馬に身分証を携帯していたので身分証がありません。」

門番:「そうか、災難だったな。新しい身分証は役所でしか作れないから、俺が同伴してやるよ。ちなみに俺の名前はニックってんだ。よろしくな!」

いきなりフレンドリーすぎないか?だが、信じてくれたなら別に良いだろう。しかも、新しい身分証を作ってもらえるらしい。後から聞いた話だと、さっきの作り話を信じた理由だが、身分証を作るとき、これまでにした犯罪が載るため、もし犯罪を犯していたらその場で捕まえるつもりだったらしい。怖い、世の中そんなに甘くないな。

この町の文化レベルは、やはり中世ヨーロッパ並だった。しかしアニメや小説で見たり想像したりする町並みとは案外違かった。なんというか家などの建造物が現代の外国風だ。アメリカに近いな。見てて面白い。そうこうしている内に、役所にたどり着いた。案外近かった。歩いて1〜2分で着いた。外見は、最寄りの役所を想像してくれ。だいたいそんな感じの外見だから。中は、マンガの冒険者ギルドみたいな柱に椅子があり受付窓口が5つ程並んでいる感じだ。(受付はきれいなお姉さんだった。)その内1番左(壁側で男の人が受付)に案内された。

受付の男性:「ご用件は何ですか?」

ニック:「こいつらに身分証を発行してくれ。料金は俺がもつ。」

兄:「おい、いいのか?料金まで出してもらって?」

妹:「そんなに親切にしてもらわなくても…。」

ニック:「どうせお前ら金持ってないだろ。逆に俺が出さなくていいのか?」

兄妹:(ギクッ………。)

ニック:「ははっ、顔に出てるぞ。お前ら分かりやすいな。」

兄:「ここは、お言葉に甘えるとしよう。」

妹:「本当にありがとうございます。」

ニック:「良いってことよ!お前らが稼ぐ事が出来たらしっかり返してもらうからな。」

兄:「あぁ、もちろんだ。むしろ倍にして返してやろう。」

妹:「必ず返します。」

ニック:「楽しみだ!」

受付の男性:「それでは、2人分で銀貨2枚です。」

ニック:「ほらよ。」

そう言ってあっさり払ってくれた。ニックは本当に良いやつだな。身分証は銀色のクレジットカードみたいな形だった。

兄:「おいニック、冒険者ギルドってあるか?」

ニック:「ここから少し行った所にって、お前ら冒険者になるのか?!」

兄:「あぁそのつもりだ。」

妹:「ちょっ、聞いてないんですけど。」

ニック:「その子の言うとうりだ。やめておけ危険すぎるぞ。」

兄:「危険など承知のうえだ。俺は冒険者になりたいんだ。」

妹:「お兄ちゃんがそう言うなら。私は1人は嫌だし。」

兄:「よし決まりだ。ニック冒険者ギルドに案内してくれ。」

ニック:「はぁ、お前らがそう言うなら仕方ないが決して無理はするなよ?」

兄:「当たり前だ。俺はともかく妹に絶対無理などさせん。」

妹:「さっき戦えって言ったばかりだよね?」

兄:「なんのことだか?」

いろいろあったが今回はここら辺で終わろう。続きはまた次回。


兄:「こうして俺達は無事町へたどり着いた。次は冒険者になって活躍し、妹の好感度を上げるとしよう。」

妹:「何目の前で堂々と言っちゃってんの?」

妹:「げぇ、優衣さんこれはだな深い訳が、」

妹:「問答無用、さぁ覚悟は出来ているよね?」

兄:「そんなことをしている場合じゃないぞ。早く第2話を締めないと。」

妹:「むぅ、上手く逃れて。まぁ良いや。この度は第2話を見ていただきありがとうございました。」

兄:「次回の俺達の活躍を楽しみにしていてくれ。」

兄妹:「これで第2話を終わります。」













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