小説更新を催促する妖精

またたび

小説更新を催促する妖精

「どうも妖精です」


「僕、薬はやってませんよ?」


「大丈夫です。そういう幻覚ではありません。それに妖精は虫ではございません」


「で、何用でしょうか?」


「貴方に催促しに来たのです」


「何の催促ですか?」


の」







「何の催促ですか?」


「あのね、普通に無視しないでくださいよ」


「あっもしかしてN●Kの集金ですか?」


「ちゃいます。ていうか無視しないでくださいよ、本気で落ち込みますよ」


「新聞とかは結構なので」


「いやだからね」


「すいません〜今両親が家にいないんですよ〜また今度来てくれませんか〜?」


「それいるやつやん、絶対いるやつやん」


「お前まさかN●Kの差し金か!?」


「さっき言ったやんか、それ。ていうか払ってないの? 払おうよちゃんと?」


「ピー……おかけになった電話番号は」


「留守電じゃないから、ていうか電話じゃないからな!! さっきから無視するなや! なんや虫だから無視ってか!?」


「そのダジャレ下手ですよ」





「……そこは無視で良かったと思う」


「……へえ」





「まあそれはともかく。さっきも言ったけど私は『小説更新を催促する妖精』なのです! あまりに小説を更新しないことに無意識に焦っていた貴方の深層心理が生み出した架空の幻覚っ! それが私なのですっ!」


「やっぱり幻覚じゃん」


「でもまあ、可愛い妖精の幻覚ならまだ良くない?」


「そういう問題じゃなくない?」


「さてさて、ほら早くっ! カクヨムでもなろ●でも良いからとにかく書きましょう! 千里の道も一歩から、ですよ!」


「でもなあ、やる気が出ないんだよなあ」


「やる気は出すものでもないかと」


「揚げ足取る人嫌いですわ〜。ってことで小説更新は当分後にします」


「ちょっと!? 貴方の新作や更新を心の底から楽しみにしてくれている人だって、いるはずなんですよ!?」


「そこは言い切ってほしかったなあ」


「ほら書きましょうよ新作! あっ、とりあえず過去作のリンクでもここに貼っておきましょうか!」


『河童と猫はお知り合い』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054886246565


『冬みたい』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054888374809


『独り暮らし』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054889268392


「小説内で別の小説の宣伝するやつ、初めて見た」


「そもそもリンクを小説に貼れるというね」


「ちなみに絵文字も打てるらしいよ、カクヨムって👍」


「「そんな表現方法が幅広いっ! カクヨムでみんな書こうねっ! みんな待ってるよ!」」


「消されないためにカクヨムに媚び売っとこう」


「そうしよう、そうしよう。ところで君さ、小説更新しようや」


「えっN●Kの集金? 間に合ってますからっ!!」


「また無視すんなや! ていうかN●Kに間に合ってるも何もないやろっ!?」


「さっきから煩いんですよ。カクヨムの小説を更新しようがしなかろうが、僕の自由でしょ!?」


「確かにその通りです」


「ん?」


「でも! それでも! 貴方の作品を待ってくれている人がいるんですよ! それは貴方以外じゃ続きが書けないんです、それは決して代わりが務まるものじゃないんです!」


「しょ、小説更新を催促する妖精さん……!」


「長いんで妖精さんで良いです」


「よ、妖精さん! 分かりました、僕、頑張りますよ! 幻覚見えるくらい、血反吐が出るくらい頑張りますから!」


「言っておくけど、もう幻覚は見えてるからね? それと血反吐が出るくらいの努力は勉強に回すべきだと思う」


「さーて! 早速新作を書いてやろうかっ! 最近の流行に合わせてみるのも良いな! 題名は『異世界転生してみたら三つ星レストランの店舗のオーナーになってた件』とか行けそうじゃね!?」


「待て待て」


「えっ?」


「君さ、最近ちゃんと寝てない?」


「いや寝てますけど」


「ならちゃんと寝たほうが良いで? 頭がぼっーとしてるとつまらないネタも面白く感じる時があるからなぁ」


「だからちゃんと寝てますって」


「とりあえず食べ物系は偽物ひろしとかハンチョウとかライバルが多すぎや、やめといたほうがいい。それに三つ星レストランのオーナーってそれ異世界転生してないやろ」


「そうですかね?」


「うん、やめとこう。ならせめてテニスじゃないテニスとか、サッカーじゃないサッカーとか、てーきゅうじゃないてーきゅうとかにしよう?」


「テニスとてーきゅうは一緒だと思いますが」


「まあそれはともかく。ほら早速他のアイデアで作品書いてみよう? まずは書き出すことが大事やで? それと、異世界転生がブームとはいえ無理に迎合するのもどうかと思うで?」


「それはなぜです?」


「人には向き不向きがあるからや」


「ほお」


「純文学、ラノベ……それだけじゃなく、表現方法だって一人称、二人称、三人称……様々や。そして、人にはそれぞれ向いている文体というものがある」


「なるほどマスカレッジ」


「懐いな、おい……。で、話は戻すが要するにそういうことや。自分に合ってる文体や作風、それを模索していくことが大切であり、新しい自分の可能性を探るのも良いけど、無理に自分に合わない作品を書こうとするのは、ダメだと思うわけや」


「勉強になりまスルメイカ」


「そんな、ありがとウサギみたいに言われても」


「勉強になりますっ! 自分に合った文体、探してみます!」


「うんうん、それでよし。ようやく私の妖精としての仕事も……」


「ちょっと待ちなっ!」


「えっ何者!?」


「私はそいつの、ダルいなあ、書くの面倒くさいなあ……という気持ちから生まれた幻覚っ! 悪魔だっ!」


「「なんだって〜!?」」


「って何、お前も驚いてんの!? お前の怠慢のせいで誕生してるんやで? あいつ」


「おいおい、青年。君さ、遊びたいちゃうんの? 彼女も友達もいない、そんな君がゲームやらなんやら遊ぶときすら創作活動に時間を取られるのは酷じゃないのか?」


「僕的には前半の、彼女も友達もいない、の方が心に刺さりましたが……あっ、痛い、心が痛いよジョージ」


「ジョージって誰やねん。まあいいや、それより貴女っ! せっかくこいつがやる気を出したのになんで邪魔するのよ!?」


「さっき妖精さん、やる気は出すもんじゃない、って」


「お前は黙っとけ!!」


「なんで……? 簡単だ! それが私の誕生理由だからだ。彼のやる気を奪う、それが存在理由……!」


「なん……だと……!?」


「ふふ、いつかはお前と戦うことになると思ってたが。どうやら、その時は今のようだな!」


「くっ!」


「勝負だ、妖精っ!」


「ああ、倒してやるよっ!」


「「いざ尋常に勝負!」」


 ボコボコ バキバキ


 グルグル ドカーン


「ま、負けてしまった……」


「よ、妖精さん!?」


「ふふ、勝負ありだな」


「ご、めんなさ、い……もう、私は……」


「そ、そんな!?」


「あり……がとう……私と話してくれて……」


 バタッ


「妖精さぁぁぁぁぁぁん!!!!」








「まあ、私もその妖精も、幻覚だけどな」


「あっ」


 こうして、僕こと作者は小説を書くことに決めた。結局はあの悪魔も幻覚、勝敗の結果など関係なかったのだ。


 でもそれでも僕は忘れない。自分の小説を楽しみに待ってくれている人たち……そして一人の妖精のことを……!


「ありがとう、みんな。僕、絶対書くよ、頑張って頑張って! 素晴らしい小説を書くよっ! 良し、思い立ったら吉日だ。早速書くぞっ! 新作『異世界転生してみたら三つ星レストランの店舗のオーナーになってた件』!!」


 終わり。ジャンっ!

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