異世界召喚された主人公といえば、大抵は規格外の力を持ち、そう痛い目を見ないというのが、昨今、よく浮かべてしまうイメージですが、本作で主人公が恵まれている点は、追放された先で知り合ったヒロイン役のみ、後は砂漠に生えている草のように苦いものばかりです。
主人公は、その出会いで何かの能力を手に入れますが、それだけで役に立つものではないという点、また様々なスキルが存在し、当然、レベルも存在するけれど、高ければそれだけで幸せになれる、成功に繋がる訳でもないという点も目を引きます。
何よりも私が好みであったのには、レベルやスキルの概念は、努力した結果を視覚的に表す数字であり、伸びていく事に価値があるのであって、高くとも泥にまみれた努力が絶対に必要である、と言外に語っている点でした。
主人公に、それを与えた、また教えたヒロインも、能力こそ高いものの、完全無欠の人格ではなく、どこか欠点を持っているキャラクターです。
それだけでなく、登場人物全員が、何らかの欠点、短所を持ち、同じくらい長所を持っている、それらが合わさる事で上手く行く――選ばれた者だけが好き勝手できる世界ではないと感じられる所に、底知れない魅力を感じられるはずです。
理想郷ではないけれど、でも理想がある、そんな印象でした。