大人になってから、絵本の類を読まなくなった。汽車がしゃべったり、キツネが変身したり。そういったものを受け入れられなくなってきたからかもしれない。だから、本作を最大限に楽しめる瞬間はもうとうに過ぎてしまったように気がする。それでもノスタルジックな読後感を感じられたのは、作者の方の力量なのだろう。時間が経つにつれて、作品の魅力の見方は変わっていく。しかし、魅力ある作品はいくつになっても素敵なものだ。抽象的なレビューで申し訳ないが、とてもいい作品だったことは間違いない。
夕暮れの中、陽が沈んでいく中、夜の暗闇の中、静かな場所で読みたくなる。哀しくて、けれど優しく、そして美しい。提灯の灯りが誘う世界は、絵本になっても素晴らしいものになるに違いない。
汽車がなくなっても、それぞれの心の中に、未だ汽笛が鳴り響く。
幻想的で、哀しくて、そして素敵な作品です。泣きましょう。読み終わった後には、清々しい気分になれるはずです。