みなさんレビューされているとおり素晴らしい作品です。詩情と物語が溶け合って、銀河鉄道とかが好きだった方とかにもお薦めかもしれません。2000文字程度なので隙間時間に手軽に読めますが、きっと読み返したくなります。できれば海の見える場所、あるいは列車に揺られて。
大人になってから、絵本の類を読まなくなった。汽車がしゃべったり、キツネが変身したり。そういったものを受け入れられなくなってきたからかもしれない。だから、本作を最大限に楽しめる瞬間はもうとうに過ぎてしまったように気がする。それでもノスタルジックな読後感を感じられたのは、作者の方の力量なのだろう。時間が経つにつれて、作品の魅力の見方は変わっていく。しかし、魅力ある作品はいくつになっても素敵なものだ。抽象的なレビューで申し訳ないが、とてもいい作品だったことは間違いない。
夕暮れの中、陽が沈んでいく中、夜の暗闇の中、静かな場所で読みたくなる。哀しくて、けれど優しく、そして美しい。提灯の灯りが誘う世界は、絵本になっても素晴らしいものになるに違いない。
汽車がなくなっても、それぞれの心の中に、未だ汽笛が鳴り響く。
幻想的で、哀しくて、そして素敵な作品です。泣きましょう。読み終わった後には、清々しい気分になれるはずです。