第3話 目覚めた先で
深い闇から浮かび上がってくるような感覚。瞼越しに白い光が差し込んでくるのを感じる。その刺激に、無意識のうちに瞼を上げる。木製の天井が目に入った。と、同時に、自分がベットに寝かされていることが分かった。
「・・・」
身体を起こし周りを見渡す。どうやら、ここは何処かの建物の一室のようだ。見る限り、部屋の中はきれいに整頓されてあり、ホテルの一室とも考え―――
「いや、ここ、どこ」
現状が出来ていなかったためか、起き抜けでまだ頭が回っていなかったからか、逆に冷静に状況把握を行えていたような気もするが、それらは突如として飛来した恐怖と不安に押し流される。
ひとまず、ここまでの経緯をまとめてみよう。目を覚ましたら僕はKKOと似通った世界にいて、色々あってモグモグと触れ合ってたら、目の前が真っ暗になって、それで、
「夢から覚めたってわけじゃないんだよね」
寝かされていた部屋は、元居た自分の部屋では無い。テレビやpcといった近代的な物は見当たらず、あるのはベットに丸机、床に敷かれた丸型の青・水・白色の三色カーペットだけだ。
周りを警戒しつつベットを出て、慎重に部屋を調べる。
「ドアは一つ。物はほかになし、かな?」
そこまで調べ、一度ベットに戻る。ドアの向こうも調べるべきなのだろうが、そもそも、状況を把握できていない以上、むやみに行く意味はないだろう。というか、怖い。ドアの前に人が立ってたりしたら、どうするのか。まぁ、その場合既にアウトな気もするが。
この世界がKKOの世界であるならばこの部屋はどこにあたるのだろうか。KKOに置いて、建物でありなおかつ、キレイに整理された部屋がある場所。ドアが一つしかなく、家具が必要最低限しかないのも考慮に入れるべきだろう。
この世界で暮らす人々の家、などと言ってしまえばきりがない。一旦候補から除外する。ならばギルドはどうか。あそこは広いし、部屋も多く存在するだろう。ただ、それじゃあ、なぜ僕はギルドに運び込まれているのだと言う話になる。理由が見えない。
「モグモグにやられた時。あれは結局死んだ扱いにはならなかったのか?この世界では死という概念がないのか、あるいは僕が特殊なのか」
仮に、僕が特殊なのだとして、なぜ、死んだら見知らぬ部屋に居たんだ?そんなのまるで、セーブポイントからやり直す巻戻り系みたいな能力―――
「もしかして、マイルーム機能か!?」
マイルーム。スマホゲームに置いて装備を整えたり、ステータスの確認をするなどいわゆる主人公の拠点のようなものである。様々な種類があるが、KKOに置いてはゲームオーバーになった場合は基本的にマイルームに帰還する。つまるところ、
「僕はたとえ死んでも何度でも蘇れるって事か!」
あくまで現段階までの情報を元にしており、確実性には幾分か欠けるが。
「とはいえ、ここでなら、ステータスが見えるんじゃないか?」
試しに「ステータス」と呟くと、目の前に半透明の板が出現する。ゲーム画面でよく見るグラフやたくさんの文字列から、これがステータスである事は間違いでは無いだろう。
「なんて書いてあるかは読めないけど」
問題はそれらの文字が見たこともないものであった事。この世界の言語だろうか。KKOにもこんな文字は無かったはずだ。完全にKKOの世界と同じである訳では無いのか。僕が見逃していたのか。
思考を巡らせつつ、この部屋に一つしかない扉に手を掛ける。すると、ステータス表示と似たようなものが空中に出現する。
「こっちも予想通りか」
そこに表示されたのは、KKO世界の地図。ゲーム内の使用ではここで行き先を選択することで、僕が行った事のある場所に転移することが可能なのだ。この世界では、と思ったが、想像どおり転移できそうだ。試してはいないから、確実なことは言えないが。
「ゲーム内の地図と少し違うな」
KKOの世界にはいくつかの国が存在するのだが、そのうちの一つである帝国の領土がこちらのほうが広く、また、ゲーム内では存在した小国連合が帝国に組み込まれている。他にもいくつか違う箇所が存在するのだが、一番の違いは、靄が掛かり見えない箇所。まだ、到達していないダンジョンや国、あるいは大陸が隠れているのだが、その範囲がゲーム内の倍以上になっている。
表示を閉じ、ここまでで入手した内容を頭の中で反芻する。まだまだ、多くの疑問があるが、ひとまず、どこかの街に出向く必要があるだろう。文字に関してもどうにかしなければならない。今の所そうでもないが、食料も必要になって来るだろう。兎にも角にも、この世界の人々と接触する必要がある。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「異世界系主人公ってどうやってコミュニケーション取ってたっけ。というか、どう喋ればいいんだ?」
・・・とりあえず、もう一回寝よ。
無双出来ない異世界生活 雨Ⅸ @amamiyatasuku
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