追いかけろ! 点Pが逃げだしたっ!!

ちびまるフォイ

長方形畑で点Pをつかまえて

Q.縦の長さが5cm、横の長さが7cmの長方形ABCDの辺上を

  点Pは毎秒1cmの早さA→B→C→Dまで移動します。

  このとき、点Pの――



テスト用紙に書かれていた点Pが長方形を突き破り紙の外に飛び出した。


「大変だ! 点Pが逃げたぞ!!」


点Pは毎秒1cmの早さどころではない速度で逃げていく。

それもどんどん速度を上げていくのでとても追いつけない。


「くっ、このままじゃ問題が解けなくなってしまう!!

 なんとしても点Pを捕まえなくては!!」


街では警察や住民を巻き込んで大捜査となった。

レインボーブリッジを封鎖しても点Pはその辺上を移動するので止まらない。


「博士、点Pはいったいどこへ向かうつもりなんでしょう」


「きっと、自由な大地を求めているんじゃよ……」


点P専門家は逃げ出した点Pが行きそうな場所をいくつか出すも、

そのどこにも点Pはいなかった。


誰もがこのまま逃げ出した点Pを諦めるしかない。


そう思ったとき、4つの点が立ち上がった。


「「「「 私達のちからを使ってください! 」」」」


「点A、B、C、D!!」


「点Pが逃げ出した理由はわかりませんが、

 彼は私達のつくる辺上から移動することはできないはず」


「いや普通に冒頭で飛び出していたけど……」


「いくよ、みんな!」

「おう!」


「「「 トリニティフォーメーション!! 」」」


3つの点が力を合わせると空に光の道筋ができた。

点Dはそれを眺めていた。


「さあ、この光の先にきっと点Pはいます!!」

「ありがとう!!」


時間差で家を出る兄弟の背中に乗って、必死に点Pを追いかけた。

光の先に点Pが見えると、思い切りタックルして点Pを捕まえた。


「ちくしょう! 離せ!! 離しやがれ!!」


「もう諦めろ! この先はすでに封鎖している!

 点P、お前の逃げる先はもうないんだ!!」


そのことを告げると、点Pは諦めたようにおとなしくなった。


「わかったよ……戻ればいいんだろ……」


「これだけ逃げたわりにはいやに素直じゃないか」


「あらがってみたかっただけなのさ、自分の運命に……」


「なんだと?」


「俺は生まれたときからずっと長方形ABCDの周りをぐるぐるぐる……。

 見飽きた風景、繰り返すだけの毎日……、そんなのに限界を感じてたんだ」


「点P……」


「それでも、誰かが俺の努力を認めてくれると思っていた。

 ところが実際はどうだ。点Pの俺をみる学生ときたら、親の仇のように見てくるじゃないか」


「まあ、誰も移動する点Pが作る三角形の面積なんて求めたくないしな」


「俺だって……俺だって、好きで移動しているわけじゃないんだ!!

 なのに俺の気持ちなんて誰もわかっちゃくれない。

 俺だってインクの血が通っている同じ点の仲間なんだ!!」


「点P……。お前の気持ちに気づいやれなくってすまなかった」


「いいんだ。それだけで十分さ。

 俺はまた長方形というなの監獄に戻るとするよ」


「お前は……お前はそれでいいのか……!?」


点Pは何かを悟ったように答えた。


「こうして必死に逃げてみてわかったよ。

 自由に移動しているつもりでも、結局は広くした片上を移動しているに過ぎない。

 迷惑をかけているか、そうでないかの違いだけさ」


「……」


「話せてよかった。テストが待ってる。俺は問題の中に戻るとするよ」


点Pは毎秒1cmの早さでもとの試験用紙の中へと戻っていった。

俺は試験用紙の問題に少し手を加えてから学生にテストを行わせた。


---------

Q.縦の長さが5cm、横の長さが7cmの長方形ABCDの辺上を

  点Pは毎秒1cmの早さA→B→C→Dまで移動します。

  このとき、点Pの――


  点Pの気持ちを答えろ。

---------





A.もうやめてくれ。


全員が満点を取った。

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