日情景

志泉

第1話 滴る水の音

明くる日、私は軒先から滴る水の音で目が覚めました。


ぽと ぽと ぽと


その音はコケの生えた石枕の下の陶器の器に落ちている音のようです。


その音をしばらく聴きながら、未だぼんやりしている頭の中で反芻しています。


梅雨の音。私は頭の中で思いました。


夜の雨足で疲れた雨雲が朝陽のゴールめがけて完走したんだなと。


おめでとう。がんばったね。これからは休もう。


ぽと ぽと ぽちゃん


大きな音がしたっきり、水の音は聞こえなくなりました。


私もはっきりと目が覚めて、梅雨の朝の冷たい空気を肺に取り入れます。


湿っているけれど、グレープフルーツみたいに爽やかな余韻がありました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

日情景 志泉 @shisen

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る