馬鹿の王

須藤二村

馬鹿の島




 あゝ……神様、もしおられるならこの馬鹿な者たちをことごとく消し去ってください。心の底からそう願った。



***



 生物は発展すると、その進化の過程で一見、しゅにとって不利とも思える形態を発現させる。

 例えば、恐怖心の欠如した遺伝子がそうだ。


 恐怖心とは、生物が生き残るための安全装置のようなもので、崖から飛び降りることを危険だと思わなければ、すぐにその集団は絶滅してしまうだろう。

 しかし、中には飛び降りた先でライバルのいない絶好の漁場を見つけることもある。その個体は集団の中で英雄視され、また集団の生き残りにとっても有利に働くに違いない。


 一般的に見て無鉄砲な馬鹿が淘汰されないのは、遺伝子の戦略上このような仕組みが存在し一定数の馬鹿に需要があるからに他ならない。そしてそれは、もしも環境が適合すれば効率よくしゅを発展させる要因となり得た。



 そうして、ごく稀に成功を収めた馬鹿が周りにはやされると、味をしめた遺伝子は集団の中で更に増殖しようとする。もちろん大半は上手くいかない。自然界の危険によって淘汰とうたされる確率のほうが高いからだ。

 だがその反面、上手くいっている限りは遺伝子もしゅの発展のための最大効率を求めて、それを止める理由はない。


 このようにして、馬鹿が増殖してしまった村があった。

 周りの山に隔離され天敵が近くに存在しなかったことも幸いしたのだろう、村は無鉄砲な馬鹿の進出により付近の集落を吸収し、そして長い年月を経て馬鹿の島となった。

 彼らは、そのことごとくが無鉄砲で馬鹿であった。


 遺伝子は彼らを見て何を思うであろうか。

 僕はこう思う。早く淘汰されてしまえ!





 漁の準備をする大人たちを浜辺の隅から眺めながら、僕はヤシの実で作った小さな帆船はんせんを組み立てていた。

 遠くで気勢を上げる漁師たちはいつもの風景だ。

 強い陽射しの下でほとんど裸同然の漁師らは、筋張すじばったむき出しの筋肉に日焼けした肌がさらに陰影を濃く与え、巨大な岩のかたまりのようにも見える。その十人ほどの男たちが、砂浜の一ヶ所に集まって一艘いっそうの船を沖へと押し出そうとする様は、さながら蟻のむれが死骸を運んでいるかのようだ。


 力自慢の男たちが海の上で船を動かすためには、水を押しのけて前に進むための板が必要となる。漁師たちにとって、その板をり船に速度を出せることは、何よりも優先される能力であり、必然的に腕力に秀でた者が偉いという序列を作った。


 僕にはそれが不満でならなかった。腕力では同年代の誰にも敵わず、この島での自分自身の評価は把握しているつもりでいる。が、蛮勇を示せと言われたところで、体力的に劣る自分が他の者を押しのけて何某なにがしかの結果を残せるとは、どう楽観的に捉えたところで現実味がないように思われた。


 そこで僕は知恵を絞って考える。そうすることが自分の価値を高めるのだと信じたからだ。いや、信じたかったと言うべきか。

 ある時、僕は得意げになって大人にこう話した。野菜は海に近いところで売った方が高く売れるし、海でとれる魚は山村で売るのが賢い方法だと。しかし、彼らはいくら言っても価値が場所と時間によって変わることを理解しようとしなかった。そんなことよりも、どれだけ大きないのししと戦って勝ったかの方が重要なことだと思っているようだった。ようするに馬鹿なのだ。


 そうしていつしか僕は、この島で自分の価値を上げることを諦め、徐々に一人で居ることが増えていった。今こうして、大きな布をかかげ風の力を使って船が動かせないかと試行錯誤しているのも、一人で海に出なければならない僕には必然の流れだったと言える。

 この馬鹿の島から脱出するために。




 ひたいの汗をぬぐい舟の模型から目を離すと、正面の林から老人が見ていることに気がつく。白髪は灰をかぶったかと見紛みまがうほど汚れていて、骨と皮しかない痩せ細った身体は油が浮いて垢だらけに見えた。衣服はボロ布をまとっただけの極めて粗末な格好をしている。別段変わったことではない。この老人は、どこに住んでいるとも知れず、常にふらふらとあてどもなく彷徨さまよい、気が向けば何かを眺めて暮らしている。島の人間がこの老人と話をしているところをほとんど見たことがないので、皆似たような接し方なのかも知れない。

 人の群からはぐれた共通項のある僕からすれば、割合見かける機会はあったが、それに積極的に関わろうとするほどのお人好しではない。せいぜいが二言三言ふたことみこと最低限の会話を交わす程度のことだ。


 ふいに遠くから僕の名前を呼ぶ声がして、村から続く小道のほうを振り返ると幼馴染のカイトとケイラが二人して駆け寄ってくるのが見えた。

 カイトは僕と同じ歳で、ケイラはその妹。彼らもまた馬鹿ではあったが、性質は邪悪ではない。むしろ僕のことをいつも気に掛けてくれている。


 浜辺までくると、カイトは息をきらしながら

「見張り台の……、話だと、そろそろレブンカが……、来るらしいぜ!」

 と教えてくれた。

「もうそんな時期なのか? まだ海鳥は現れてないと言ってたが」

 ヤシのジュースをカイトとケイラに手渡すと、よほど急いで来たのかカイトはまだ肩で息をしながら飲み干した。

「おととい漁から戻ってきた爺様が見たらしいよ。それで見張り台が立てられたんだ。もう間もなく来るかも知れないってよ」

「洗濯の途中でカイトを見つけたから、アタシもついてきちゃった!」

 と屈託のない笑顔でケイラが言う。


 カイトは十五歳にしては体格も良く、最近では大人たちの仕事に混ざることも多いと聞く。そのお陰でいち早く漁の情報も知ることができたのだろう。情報を人よりも早く得ることはとても重要だ。

 ケイラは幼い頃からよく僕達の後ろにくっついてきた。各所がしっかりと発育した今では、あの頃の面影はない。僕の世話をやたらと焼きたがるお節介さが玉に傷だった。


 カイトの言った、レブンカとは巨獣のことである。島の民は一年に一度、海から訪れる巨獣を倒すため命がけで戦い、仕留めた者には栄誉が贈られる。ことに娯楽の少ないこの島では一種の祭りのような役割を果たしていて、この時期の彼らの無鉄砲さはより拍車をかけたものになった。

 二人ともその見物に来たようだ。彼らの話が正しければ、この浜はすぐに人でいっぱいになるだろう。


 沖合いで法螺貝ほらがいの音が聞こえると、浜の男たちは船を押す力にさらに勢いがついた。

 どうやらレブンカが出たようだ。一昨年捕獲に成功して浜辺に上がったレブンカは、大人が三十人並んで寝そべってもまだ大きかった。そして今、沖に見える巨獣はそれより遥かに大きい。尾の一振りが小さな山ほどもある波を作って漁師たちの船を呑み込んだ。

 既に沖合いにいる男たちは、われ先にと海に飛び込み、レブンカの巨体にとりついてもりを打ちこむ。

「……馬鹿なのか?」

 なぜそんなことをするのか理解ができない。毎年この漁でレブンカにやられて何人もが命を落とす。僕にはレブンカが、そこまでして手に入れなければならない食糧源だとは、とても思えなかった。


 僕は馬鹿を憎んでいる。なぜもっと安定を求めないのか。危険を冒して一か八かの賭けに身を投じなくとも、着実に成果を積み重ねた方が遥かに効率的だと言うのに。

 しかし、彼らにそれを説いたところで何も解決はしないのだ。

 浜辺には、多くの島民が集まって漁師達の一挙手一投足いっきょしゅいっとうそくに歓声を上げている。ケイラは僕の腕を掴まえたまま、沖に向かって「頑張れ!!」を連呼していた。



***


 ここ数日、僕はとても機嫌が良い。

 発端は外国から来た巨大な船だった。


 遡れば先月の嵐のあった夜のことだ。島の付近を通りかかった船が難破して数人の兵士が流れ着いた。島民は彼らに食事を与え介抱してやった。その後、捜索にきた外国船が難破した船の残骸を発見してこの島まで辿り着いたという訳だ。

 島民は何がしかの礼を受け取るとそれ以上の興味を持たなかったが、僕にとっては初めて触れる異文化にかつてない興奮を覚えた。


 まず驚いたのは、途方もない大きさの船だ。戰船いくさぶねというものらしい。先だってのレブンカと同じくらいの大きさがあるんじゃないだろうか。しかも、そこには僕が求めてやまない幾重いくえにも連なる帆が張ってあるのだ。一際目立つその船の周りには、護衛するかのように小さな船が十隻もいる。小さいと言ってもこの島で一番大きな船と同じくらいはあるだろう。

 僕は、それらをもっと知りたくて、助けた兵士のつてを頼って戰船に乗り込むことに成功したのだ。


 僕がしたことは、まず価値観の擦り合わせだ。彼らにとって何に価値があって、何に価値が無いのか。それを互いに橋渡しすることができれば、僕は利益を上げられる筈だ。

 幸いにも何回か持ち込んだ産物の中で、一番偉い司令官は金色に光る金属に強く興味を惹かれたようだった。


「これはどこで採れるのかね」

 司令官は興奮気味に聞いてきた。

「なに、こんなのは山に行けば幾らでも採れる。これは確かに島では装飾品を作る材料として流通している物だが、言うほど珍しくはない」

 僕は価値の話が通じる相手と出会って嬉しくて堪らなかったから、つい口を滑らせていることにも気がついてなかったのだ。

「素晴らしい! これは是非欲しいな」

「ではそちらの国の産物と何が交換可能かを……」

 司令官は僕が考えてきた提案を遮ってこう続けた。

「交換? 大して価値の無い物なんだろう? だったら我々が貰っていってもいいじゃないか」

 何か雲行きが怪しいと思ったが、もう手遅れだった。

「いや、掘るにはそれなりの労力が必要で……」

「なに、労働力なら幾らでもいる。島民に掘らせればいいのだ」

 司令官は最初から島民を対等な取引相手とは思っていなかったのだ。

「まっ……待ってくれ! 彼らを奴隷にしようと言うのか、それでは話が違う」


 僕は、この金属の価値を知らない島民に変わって利益を手にすることで、島民達に褒め称えられる様子を夢想していた。知恵の力によって僕の名前が英雄として島に刻まれれば、島の風土も変わっていくのではないかと密かに期待した部分もある。


「それなら他の島民に聞くことにしよう。少々痛めつけて我らの武力の前では無力だと思い知らせてやれば大人しくなるだろう」


 司令官にとっては、島で採れる金属だけが目当てであって、協力者で無くなった僕に価値などなかった。唯一、残された使い道は島民をおびき寄せる《おとり》だ。



***



 船首の目立つ場所に丸太のような杭が立てられ、僕は後ろ手に縄で頑丈に縛りつけられた。この高い位置からは、海の上の様子がつぶさに観察することができる。普段の僕ならば、この眺めを堪能したことだろう。だが今の自分の立場は、およそ考えられる限り最悪だ。

 いったいどのような伝令が送られたものか、眼下に広がる視界には弓やもりを持って武装した島民達の船で埋め尽くされている。


「カイト……ケイラ……!!」


 小舟の一角に二人の姿を発見して胸が痛んだ。いくら外国から武力で脅されたからと言って、瞬時にこれだけの統率力を発揮できるほど島民は戦にけてはいない。

 ただでさえ島民との繋がりが薄い僕のために、即断して動いてくれるとも思えなかった。これらは、カイトとケイラが島中を駆けずり回って説得して集めてくれたものに違いなかった。


「もう……もう……やめてくれ……」


 僕の望みとは裏腹に、戦闘の幕は兵士から放たれた一本の矢によって呆気なく切って落とされた。互いに矢と槍が交錯する中、僕のいる戰船の本体には被害と言えるものは無い。僕がいるからだ。

 大国の圧倒的な武力差は歴然としていたが、島民の勇敢さのみがそれを凌駕していた。その代償に島民の舟は徐々に数を減らしていく。


「やめろぉぉぉぉーーー! 来るなぁぁぁぁ! 帰ってくれ!!」


 僕は声の出せる限り叫んだが無駄だった。

 なにしろ彼らは馬鹿なのだ、自分のことなど一切考えず、ただひたすら仲間を助けるため一直線に進むことしか考えていなかった。なんという愚かな者たち。


「少しは効率を考えろ……僕一人の命。それを助けるために多くの命を失ったら……天秤にかけても吊り合わないだろ……」


 涙声で言う僕の言う理屈など誰も聞いてはいなかった。次々と増える死体の山をただ見ているしかなく、噛み締めた奥歯の軋む音が頭蓋に響いているのみだった。

 僕は自分が少しばかり賢いと思って、重要なことが見えていなかったことに気づいた。自分が一番大事で、ずる賢く他人を利用することばかり考えていた。

 本当に愚かで頭が悪い人間は、この島で僕だけだったのだ。


 しかし、全てがもう手遅れだ。僕一人の欲望とちっぽけな虚栄心が、善良な島民たちを全て滅ぼしてしまう。



 あゝ……神様、もしおられるならこの馬鹿な者たちをことごとく消し去ってください。

 代わりに僕の差し出せるものなら全てを捧げます。

 心の底からそう願った。


 溢れだした涙が鼻の奥をつたって鼻水とまざって流れ出し、僕の顔はぐしゃぐしゃになっていた。

「お前はまだ助かりたいのかえ?」

 いつの間にいたのか、すぐ側に立って僕の顔を覗き込んでいる老人の姿があった。骨と皮だけの痩せ細った身体にボロ布をまとった、あの気持ちの悪い老人だ。

うるさい! あっちへいけ!」

 僕は髪を振り乱して叫んだ。

「もうすぐ全てが終わろうという時に、そんな虫のいい話を誰が考えるか!」

 恐らくその時の僕は鬼のような形相をしていたはずだ。


 醜く汚い老人は、その勢いに気おされて少し下がると海を指差してこう続けた。

「もしあれを助けたくば、お前はどんなことをしても生き続けねばならぬ。お前が死ねば、あれらも死ぬ」


「なっ、何を言ってるんだ? 貴様はッ! 馬鹿か!」

「そういうさだめじゃ。お前が死ねばどのみち我らは滅びる」


――どうしてここにいる?! いつから? 兵士にはこいつが見えてないのか。


 業を煮やした司令官は、腰から長剣を抜いて島民に見えるように僕の首筋に当てた。

 だが、彼らの勢いが止むことはない。当たり前だ。これが脅しだと理解している者がいるかどうかも怪しい。

 それを見た司令官は、近くの兵士に手足をもいで海に投げ入れるよう命令した。誰の手足をだって? 僕の手足をだ!!


 醜く汚い老人は黙って見ている。


 兵士は表情を変えることなく、一振りであっさりと僕の右腕を切り落とした。さっきまであったはずの場所からそれが無くなって、動かそうとするが何もなく空を切った。


「うわああああああああああああああああぁぁぁ!」


 激痛と恐怖に心の中を支配される。痛い……殺してやる……痛い……殺してやる……痛い……痛い……痛い……怨嗟えんさの言葉が頭の中を埋め尽くす。


 兵士は右腕を海に投げ入れた。戦場の怒号が飛び交う中、少し間が開いてボチャンと水面に落ちる音が聞こえた。

 島民に怯む様子はなかった。

 醜く汚い老人は黙って見ているだけだ。


 そして、兵士は続けて僕の左腕と右足と左足も切って落とすと、それを次々と海に投げ入れた。もう柱にくくり付けた縄も意味をなさない。

 最後にくり抜かれた右の目玉が海に投げ入れられると、司令官は辟易へきえきとした様子で部下に命令する。


「もうよい。元より島民どもに用はない、全て射殺いころしてしまえ」

 兵士達が弓をつがえ、一斉に島民に狙いを定める。と、その時だった。


 海面が山の如く大きく盛り上がり黒い巨獣が姿を現した。しかも五匹同時に。

 五つの黒い大きな山が、船を囲んで見下ろした。


「ば……馬鹿な……?! なんだあれは……生き物なの……か?」

 司令官の身体は恐怖で凍りついたように動かない。動けるはずがない。

 その巨獣と比べると、戰船でさえ赤児のように矮小な存在に見えた。かつて、ここまで巨大なレブンカは誰も見たことがない。

 兵士達がおののく中、動ける者は島民達だけだった。何か尋常ではないことが起こっていると誰もがそれを本能で感じとり総毛立つ。


 汚い老人の姿は、もうどこにもなかった。


 巨獣が戰船へ体当たりすると、最初の一撃で横腹が大破し、大きく甲板が傾いた。胴体のみとなった僕の身体は転がって抗うすべもなく海に投げ出されてしまった。

 海面にぶつかる一瞬の衝撃と水の飛沫しぶき

 海中へと沈んでいく身体からだ

 遠くなる海面の揺らめきを見ながら僕には何もできることはない。薄れる意識の中で、あの汚い老人がはなった言葉を思い返していた。

 最後のあぶくが肺から漏れ出た。その刹那せつな、僕の身体は強く抱きとめられて波の上へと引き上げられた。それから、しこたま飲み込んだ海水を咳き込んで吐き出し、空気を思い切り吸い込んで叫んだ。

「カイト!!」

 カイトに抱き抱えられてケイラの待ち構える小舟に引き上げられると、次はカイトが叫び返す番だ。

「この大馬鹿野郎!」

「……すまない」

 僕は素直に謝る。傷口はすぐに締められて、身体は布でぐるぐるきつく巻かれたあと、ケイラに泣きながら抱きしめられた。


 その後のレブンカの暴れぶりは地獄絵図を見ているかのようだった。兵士の乗る船を巨体がバラバラにし、兵士もろとも海中の奥深くへ引きずり込む。一匹の巨獣が潜り始めただけで、付近には船を飲み込む大きなうずができた。

 島民達は壊滅した船団から、溺れかけた幾人かの兵士を引きずり上げて浜へ連れ帰った。特に理由はない。溺れているから助けた、それだけのことだったろう。


 僕はといえば、泣きながら包帯を巻くケイラの手によって介抱されているところだ。

 皆に心配をかけた僕のことを馬鹿だ馬鹿だと罵りながら。


 僕には既に、何かを力によってなすことも、他人を暴力によって支配することも叶わない。ただ、唯一許されたことは、彼らを守るために知恵を使い、考え、助けることだけだ。


 浜にいる捕まえた兵士に混ざって司令官がいるのに気がつき「しめた」と思った。こいつの存在は、大国との交渉をする上で有利に働くだろう。

 

「おい、あんた。運が良かったな」

 激痛に耐えながら声をかける。

 司令官は、ケイラに抱きかかえられたままの僕を睨みつけた。

「小僧、そう言えば貴様の名を聞いてなかったな……」

 それに答えることはなかった。


 今はもう名前などいらない。これから僕がやるべきことは、はっきりと分かっていた。

 僕は、馬鹿の王だ。



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馬鹿の王 須藤二村 @SuDoNim

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