である少女 夢台 礼子 は真実に辿り着けない ー完ー

本編では、真実が語られなかったので、不審な男こと、この僕が少し解説でもしましょう。

第0-2話 解説(メタ発言あり)


ーある一室ー


「え、これで終わり? なに、最後の? 」


「仕方ないじゃないですか。この話は、番外編みたいな物なんですし。 まぁ、本編をいつ読めるのかはわかりませんがね」


「ふぅん」

 渋々しぶしぶといった調子で、白い髪の女性が続ける。


「じゃあそのへんは妥協だきょうするとして、結局なんで彼が死んだのかとか、家族はどこに行ったのかとか、どこまでがあの娘の妄想だったのかとか、全然書いてなかったわよね? 」


「この話はあくまで現代ドラマであって、ミステリーや推理小説ではないんです。

 第一、答えを知っている人がいくらでも居ました。 推理する人が居なければ、そういったジャンルにはなり得ないんですよ。」


「あの娘だったら駄目なの? あの夢台って娘。記憶喪失の主人公なら、いくらでもいるんじゃないの? 」


「彼女は確かに探偵役に近かったように見えたでしょうが…。彼女は探偵には成り得ません。主な理由は2点あります。

 まず、夢と現実が判っていない。論理的な思考ができても、幻聴と幻覚まみれでは、解を出すのは少々厳しいでしょう。

 そしてもう一つのほうが厄介なのですが、彼女は真実から逃げていたんです。だから何があったのか分かったとしても、6~7話の様に辿


「えー。でも、人がひとり死んでいるんだよ。誰かが謎を解かないと報われないでしょ? 」


「誰が、一人と言いましたか? 」


「「エッ!? 」」

 少女と女性は声を揃える。


「もう何でもいいから、さっさとこの話の前に何があったのか、教えてちょうだい!」「ご主人さまが、探偵役を演ればいいんじゃないでしょうか? 」

 女性が声を上げ、少女が手を挙げて、言った。


「この話には伏線が無さ過ぎるので、この話の探偵役はできません」

 その言葉に、女性はぶーぶーと文句を垂れ、少女は少しガッカリとする。


「ですがまぁ、何があったのかは話しましょう。あくまで僕の推理ですがね」


「あれ、探偵役はらないんじゃなかったの?」


です。

 僕が演ってしまったら、推理小説で急に目撃者が現れて事件の全貌ぜんぼうについて語りだすようなものです」


「物語の外から解説をするのも、いかがなものかとは思うけどね」


 女性の小言はいつものことなので、青年は語りだす。

「事故のあった日は、土曜参観の日でした。理科室に彼女たちは集まっていました。

 担当の理科の先生は薬品が大好きな人だったんだと思います。彼の授業はなかなかに刺激的で人気だったんじゃないでしょうか。中学生あたりだと、多少危険な薬品も扱えるようになってきますからね。

 その日は親御さんたちが来るということで、張り切っていたのか、将又はたまた、緊張していたのか。なんにせよ得意の化学実験でもしようと考えていたんじゃないでしょうか。

 実験の前には説明も必要でしょう。その他にも、少し危険な薬品を自慢したり、生徒を少しあおって授業に集中してもらうための工夫もあったんだと思います。事実、彼は薬品庫からいくつかの薬品を並べて、教卓の上に置き、生徒と保護者を前に集めていた。

 そんな時に、少し長めの地震が起きた。地震自体による被害はなかったが、薬品は倒れて混ざってしまった。

 薬品には混ぜちゃいけないものが有ります。混ざっちゃいけないものどうしが混ざると、有毒ガスを発生させたり、爆発したりします。爆発は熱を発生させますから、他のものの反応を促進する事も…」

 余り薬品の事について語ってもしょうがないと思い、青年は一度話を区切った。


「と、まぁ爆発の話は置いておいて、大体の有毒ガスは空気よりも重いです。地震対策として、机の下に入っていた人達はダイレクトに吸ってしまったんじゃないでしょうか。

 グラグラになりながら、彼は彼女を連れて理科室から出て、前にあった女子トイレまで行った。そのままでは倒れてしまい、ガスを吸い続けることになるとでも思ったのでしょう。

 そして、彼女を窓から逃がした。まぁ、落としたに近そうですけどね。でも、そのおかげで彼女は軽い、打撲と中毒症状ぐらいで済んだ。

 しかし、親と恋人や友人を失ったショックが大きすぎたので、親戚が見舞いに来てもすぐに退院はできなかった。しばらくの間は、心陵しんりょう先生の下でカウンセリングを受けることになっていた。

 数日が経って、彼女が冷静に見えたので事のあらましを話した。しかし、彼女は先生の言うことを信じられなくなり、病院から抜け出した。が、自宅に戻り現実を突きつけられ、イスに座ったあたりで正気を保てなくなり、自らの記憶を封じ込めた。

 ってとこですかね」


「それで、最初に目を覚ましたところから始まったのね」


「ええ。学校に誰もいなかったのは事故の後で休校になっていたからで、警察がいなかったのは事故から数日たって調査が終わっていたから。

 などといった細かい補足が必要なところはありますか?」


「じゃあ、途中の、病院で真実を聞いた後は何が起こったんですか? 」


「いい質問です。6話から、7話に移ったところですね? 」


「はい! 」

 いい質問だとほめられて嬉しくなったのか、少女は元気よく答える。


「あれは、一度目に聞いた時と同じ事が起こったんですよ。

 自分を守るために彼女は真実に辿り着かなかった」


「ああ!だから話が急に飛んだんですね」


「私からも一つ。

 ミステリーじゃないのは分かったけどファンタジーじゃ無いのはおかしいんじゃない? 幽霊が出てきた時点でファンタジーでしょ? 」


「いつ、幽霊が出てきたと言うんですか? 」


「最初のアレと最後にアンタが話してたアレよ」


「最初のは彼女の妄想ですし、最後のは僕の独り言です」


「ちょっ、えっ?あんだけ意味深な感じでそれは無いでしょ!

 何より、アンタが出てきた時点でファンタジーなのは確定してるじゃ無い」


「はいはい、どーせ僕はファンタジーな存在ですよー。

 でも、ファンタジーして無いからセーフですー」

 女性は、その後もぶつぶつと文句を言い続けるいるが、青年はそれを無視して続ける。


「さて、この話はおしまいです。もう寝ましょう。 


 ・・・あ、次とその次の話には僕は関わってないので、出てきませんから」

 青年はぽつりとそう言うと、部屋から出て行った。







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である少女 夢台 礼子 は真実に辿り着けない バなナ @MujirushiBanana

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