ー5ー kvin

「わしの名前は“シブガキ”じゃ。おそらくこの世界では各々に能力が与えられとる。さっきおめぇが言うたように蜘蛛の能力が与えられとる。」

シブガキは口の糸を噛み千切った。


「あいつは“試練”と言うとるがこれはゲームで言うところの“チュートリアル”。死ぬやつもいるかもしれんが、ちゃんと行動すれば死なんはずだ。クリアできるから試練なんじゃろ。」

このシブガキとかいう男それなりに説得力がある。


「他の連中はなかなか動きそうも無い。わしらだけでもクリアするしかない。」



『汝らに争いの意思なし…』

化物は右腕を伸ばし近くを一掃した。

周りにいた2、30人が吹き飛ばされた。


伸びた右腕はさらに振り上げられた。

『汝らに争いの…』


「やべえっ…避けろ!!」


『意思なし!!!』

ズドォォォォオ!!


振り上げた腕はそのまま地面に叩き付けられた。衝撃波と地響きで動けない。


俺達の周りまで攻撃は届いていなかったが、その惨状は凄まじいものだった。


「…あ…がっ…」

「……いてぇよ…」

「…たすけて…」



『闘う意思の無い者達よ。』

握り拳を作り両手をゆっくりと肩の高さまで上げ始めた。

黒いオーラのようなものが目でハッキリと見える。


『…最大の憎悪〈マキシムモ アラーモ〉…』

拳を振り下ろすと奴の一帯が吹き飛んだ。

さっきまでの普通の攻撃とは威力が段違いだ。


砂埃が巻き上がり、風圧で転げ飛ばされる。


「いてぇ!!」

石つぶてが激しく飛び、数が多過ぎて防げない。


砂ぼこりが落ち着き目をゆっくり開けるとおぞましい光景が飛び込んできた。

辺り一面の血の海。さっきまで嘆き倒れていた者達は、声も発することが無い屍へと変わっていた。


腹の底から熱く苦いものが上がってくる。

「…うっ…オエッ」

ユキヤは耐えられず嘔吐した。


当たり前だ。見たこともない量の血と死体の山。さっきまで怯え呆けていた者達が立ち上がりもしない。


『…矢(サーゴ)』

右手を貫手の形でこちらに爪を立てている。

爪が光り、ある程度貯まると、こちらに向け飛ばしてきた。

光の塊は玉となってユキヤに向かっていく。


「…プッ!…プッ!」

シブガキは口から糸の塊を光の玉に向けて飛ばした。糸とぶつかるとクモの巣状にになり、まとわりついて威力を落とし、5発ほどぶつけると球威は完全に無くなり、消滅した。


「すまん、助かった。」


「行こう。…終わらせよう。」

俺は化物に向かって全速力で走りはじめた。







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empireoーエンピレオー スミヒラ @konitamm

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