第3話猫のいる公園
知る人ぞ知るこの街の猫スポット。
その名前は猫山公園。
実のところ、ちゃんとした名前はあるらしいのだが、公園内を見渡しても名前は見つけることは出来ない。 そういうわけで、勝手に猫山公園と呼んでいる。
公園はシーソーとブランコが一つずつ、そしてベンチが2つだけ置いてある小さい公園だ。
「にゃんこ、にゃんこ、にゃんこー」
「こっちだこっちだ! おっと、捕まるわけにゃいかないぜ!」
蓮花川さんはトコトコとスマートフォン片手に猫をストーキングし、若月さんはエノコログサで猫を翻弄して遊んでいるのをベンチにおとなしく座りながら眺めている。
言わずもがな、食べすぎてお腹がパンパンなので食休み中だ。
しかし、まあ、状況がよくわからない。
朝起きたらあの猫と遊んでいる2人がベッドで寝ていて、その後家からつまみ出された。 そんでもって、駅の前で2時間待たされた挙句、ステーキ屋で肉を1kg食わされた?
いや、何なんだよ本当に。
「おう、信之。 腹の調子はどうよ?」
「あー……、まだ本調子じゃないですねー」
いつの間にやら若月さんがすぐ横まで来てた。
「そりゃそうだわな。 俺や舞も割と食う方だと思っているけど、あれを食えと言われても、まず食えないぜ」
だったら食わせるなと喉元まで出かけたが、ぐっと抑える。
「……言いたい事はいろいろあるんですが、まずはどういう経緯で僕のベッドに潜り込んだのか聞いてもいいです?」
「そりゃ、お前の兄貴から子供作ってくれって言われたからな」
自分だって花の男子学生、ソッチ方向は興味もあるし、知識はちゃんと持っているつもりだけど、何かをヤッた形跡はなかったはずだ。
「ちゃんとチューしたから、そのうちお腹が大きくなるだろう」
「いや、チューだけじゃ子供は……っていうか何やってんです!?」
同衾しているだけじゃ飽き足らず、自分の初キッスまで奪われていたとは思わなかった。 いや、同衾されている時点でキッスより上の事やられているような気がしないでもないが。
「だから子供を作るためって言ってんだろ?」
「……そういえばまだ、年齢とか聞いてないんですけど、今、お何歳なんですか?」
「22で来月には23になるな。 ちなみに舞も同い年だぜ」
4つ、いや5つ上か。 義務教育はどこいった。
「……一応言っときますけど、チューじゃ子供は出来ませんよ?」
「いや、出来るだろ。 流石にコウノトリが運んでくるとか、キャベツ畑で取れるとか言うんじゃないだろうな」
マジかこの人……。
一人称が「俺」だから、男勝りなんだろうと勝手に思っていたけど、もしかしたらとんだ箱入り娘なのかもしれない。
「えーとですね。 花には雄しべと雌しべって器官があってですね……」
「花の受粉のことくらい流石に知っているぜ」
「人間も同じで、受精させないと子供はできないんですよ」
「……イマイチわからん。 おーい! 舞ー! ちょっとこっちに来てくれ!!」
相変わらずスマートフォンのカメラで猫を撮影して、恐らくはSNSに上げているであろう蓮花川さんが呼ばれてトコトコとこちらへやってくる。
「どうしましたマリナさんー?」
「いや、信之がチューじゃ子供できねーって言うんだけどよ。 他に子供の作り方ってなんか知ってるか?」
「あー、そういうことですかー。 チューじゃ確かに子供は出来ませんよー」
「マジか」
「マジですよー」
どうやら蓮花川さんはまともな知識を持ち合わせているようだ。
「子供を作るにはですね、セックスと言って、男性器を女性器に挿入して、膣内に射精することで出来るんですよー」
「男性器、女性器っていうとおしっこする所だよな?」
「そうですよー」
それから子供が出来るメカニズムを若月さんが蓮花川さんに教えてもらっているが、次第に若月さんの顔が真っ青になってきていき、今にも泣き出しそうなくらい目に涙がたまってきている。
「……助けて、舞。 俺、怖くて子供作れないかもしれない……」
子供が大人に縋るように、蓮花川さんに抱きつく。
実際、結構な身長差があるので本当に子供のようにしか見えない。
「大丈夫です、私達もお父さんとお母さんがそういう事をヤッたから出来たんです。 私達が出来ない道理はありませんよー」
……そりゃ、そうだけども。 両親の情事とかできることなら想像したくない。
「ほら、あそこにいる猫ちゃんだって、交尾をしているじゃないですかー。 あれと同じことをやればいいんですよー」
蓮花川さんが指を指している方を見ると、オス猫がメス猫に覆いかぶさり、ヘコヘコと腰を動かしているのが見える。
「……なんか変な声で鳴いてるけど、痛くないのか?」
「猫ちゃんのちんちんには返しみたいな棘があって、とても痛いらしいですよー」
そう聞くやいなや、ぽろぽろと涙を流し、少し鼻水をたらした顔で自分の方を向いてくる。
「……信之のちんちんにも棘があるのか……?」
「いや、ないですよ。 というか、その、ちんちんって言うのやめてもらっていいです? すっごく僕が恥ずかしいんですが……」
「本当か? 本当ならちんちんを今出して見せてくれ! 俺が安心するにはそれしかない!!」
ないってことしか聞いていない。 というか
「なんで、公園でちんちん見せないといけないんですか!? 普通に無理ですよ!?」
普通に出したくないというのもあるんだけども、男が150cm弱の女性にちんちんを見せるとか、普通におまわりさんに厄介になる事案である。
「あああああ、本当は棘あるんだああああああ!!」
ついに泣き出してしまったが、無理なものは無理である。
「マリナさん、お願いするときは先に自分のを見せないといけませんよー、いわゆるギブアンドテイクってやつですねー」
「……ギブアンドテイク?」
「そうですよー、ですから自分の女性器を先に見せるのが筋ですよー」
まて、何を言い出すんだこの女は。
「確かにそれが筋ってモンだな……。 信之! ちょっとあそこの草陰に行くぞ!」
乱暴に手首を掴まれて、そのまま引っ張られていく。
「待って!? すっごい嫌なんだけど!?」
「うるせぇ! こっちだって恥ずかしいんだよこの野郎!」
顔は真っ赤で、目にはしっかりと涙を溜め込んでいる。
恥ずかしさが半分と、逆ギレしているのが半分という感じである。
「スパッとやるぞ、スパッと!! そうじゃないと俺が恥ずかしさで死んでしまう!!」
「恥ずかしいならやらなくていいじゃないですか!?」
「それよかお前に棘があるかどうかのほうが重要なんだよ! 死活問題なんだよ!!」
そうこうして、ついに草陰へと連れ込まれてしまった。
「3秒! 3秒だからな!?」
そう言うと若月さんは履いているジーンズを緩めて、下着ごと一気におろした。
「……、……、……。 はい、3秒! これで文句ねぇだろ!?」
宣言通り、3秒でジーンズを引き上げる。
耳まで真っ赤にして、今にも顔から火が出そうである。
「オラ、信之ィ!! さっさと見せやがれッ!!」
「ちょっと待って! せめて、もうちょっと待って!」
自分、草壁信之は保健体育やエッチなDVDとかで知識としては知っているけど、生の女性器を見たことは初めてである。
つまり、何が言いたいかというと、初めて見る女性器を前にして、下半身に血液が集中してちょっと人前には出せない状態になっているのだ。
「この後に及んでは待ったはねーよ! 舞ィィィ!!」
「イエス、アイ、マムー」
いつの間にか自分の後ろに潜んでいた蓮花川さんが、自分を羽交い締めにしてきた。
「うぉらあああああ!!」
そのままズボンが一気に降ろされ、外気に自分の男性器が晒される。
「あらー」
「……は?」
何その反応。
いや、人サマのモノと見比べたこととかないし、よくわからない反応されると、かなり不安になってくるんだけど。
「ああああああ、俺の体にこんなん入らねーよ!!」
「大丈夫ですよー、少々大きめですが、ちゃんと入りますよー」
「いやだああああ怖いいいいいい、お家帰るううううう!!」
「マリナさんー、どこ行くんですかー、待ってくださいー」
若月さんは點せk日ながら、来た道をすごいスピードで走っていき、蓮花川さんもその後をトコトコと追っていく。
そして、下半身を露出させた哀れな男子学生が一人、取り残される。
「誰でもいいから、どうしてこうなったのか教えてほしい……」
この状況で泣きたいのは間違いなく自分の方である。
どうしてこうなった! ラッコonドッグ @araigumaX
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。どうしてこうなった!の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます