最終話 やっぱり魔法少女なんか大っ嫌ぃ!



「。。。貴女達、一体何者ですか!」


「。。。。。」




 今夜はなんだか、いつもよりお月様がとても綺麗に見えるそんな夜。。。


 夕方からの警戒任務で、二年前まで日本と呼ばれていたこの島国の東側半分を二人一緒にグルッと一回りしたあーちゃんと私は、お家に帰る前にこの赤白の大きな鉄塔の天辺でお月見をしていました。

 いつも私の右側が指定席のあーちゃんは、さっきから私の肩に寄りかかってウトウトとお眠みたいで


(フフフ♪そろそろ帰ろっか)


 そう思っていた時、その人達はやって来たのです。



「。。。目標、確認」



 紫色の魔法のドレスを纏い、顔や手足にはホッケーの防具?みたいな機械がたくさんな魔法少女女の子。。。?

 だけどなんとなく気味が悪いのは、やって来た10人が10人ともまったく同じ背格好をしていて、魔力的な気配までも同じなのです。。。しかもこんな大勢がすぐ側に来るまで、私もあーちゃんもその気配にまったく気付いていませんでした。


 イヤな予感。いえ、既視感。。。?の方が近いでしょうか?


 私はこの人達を刺激しない様あーちゃんを静かに抱き寄せ、逃げる隙を伺います。




「。。。了解、試験行動ヲ開始シマス」



「お姉ちゃん!」

(ドーーーーン!!!!!!)



「。。。。。え。。。?」




 轟く爆音、吹き抜ける爆風。。。

 あーちゃんの声と同時に突き飛ばされた私に見えたのは、黒煙に隠された私達が座って居たのお気に入りの場所。




「。。。あーちゃん!!!!!クッ、退いて!!!」




 私は襲い来る魔法少女達を躱しながら、再び鉄塔の天辺元居た場所を目指します。だけど一人、二人、三人目のを躱した所で、身体に絡み付いて来たワイヤーが邪魔をします。




「あーちゃん!あーちゃん!!!」


「。。。。。」



 立ち上る黒煙に向かって呼びかけますが、あーちゃんの返事はありません。。。



「どうして。。。どうしてこんなこと」


「。。。」




 私の身体をワイヤーでギチギチと拘束する魔法少女達からの返答は無く、変な空気沈黙の中に聞こえるのは私の涙を堪える声だけ。。。。。




「アッハハハハハハハ、こんばんはクリムゾン・セカンド♪ご機嫌は、いかがかな?」




 そんな中で新たに聞こえて来たのは、魔法少女達の一人が手に持つタブレットに映る研究者風な男の人の声。。。




「初めましてクリムゾン・セカンド。ボクは国連の反魔法組織、ナイトメア・ロードの技術責任者ドクターと言う者だ。


 さて、いかがだったかなボクの娘達は♪

 先ほどの無駄の無い統制が取れた動き!襲撃から捕縛までの手際の良さ!そしてそのワイヤー装備!どれもこれも素晴らしい出来だろ?♪♪♪」


「。。。クッ!!!アナタ達は、一体何が目的なんですか!」




 こういうの何て言うんだっけ。。。

 この前あーちゃんと見たアニメに、似たような敵が出てた気がする。確か、えっと。。。マッド、マット?




「。。。目的?あぁ、正直ボクはキミ達魔法少女が世界から独立しようが何をしようが、どうでもいいんだよ。。。


 ボクはただ、科学の力で魔法を超えたい!!!ただそれだけなのだよ!!!!!!!


 。。。。。というわけで、キミももっと本気で闘ってみてくれないか?さも無いと、キミの大事なお仲間が♪」


「アァァァァァァ!!!」


「あーちゃん!!!」




 ようやく晴れかけた黒煙の向こうから、私の妹の苦しむ声が聞こえる。。。


 私を爆発から庇ったあーちゃんは何故か酷いダメージを負っていて、私と同じ様に二人の魔法少女のワイヤーに拘束されていた。もしかすると、さっきの爆発の時障壁バリアをレジストされていたのかもしれない。




「アッハハハハ♪さぁ、世界で二番目に強いと噂の魔法少女お嬢さん、キミの本気をボクに試せておくれ???」




 私の妹あーちゃんの傷付いた姿を見てから、ドクター?とか言う人間の話は聞こえない。

 急に胸の奥の方が熱くなって、頭が痛くなって。。。心臓の鼓動に合わせてズキズキするその激しい痛みが、なんだかとてもムカつく。モヤモヤとするこの変な感じが、私をスゴくイライラとさせる!




「さぁ、さぁ!さぁぁぁぁぁ♪♪♪」


「。。。ねぇ、さっきからウルサィょ?人間生ゴミが」




 ワイヤーに縛られながら握る拳が、ボキボキと軋む音がした。


 そして次に気が付くと、私はワイヤーグルグルで気を失っているあーちゃんの目の前に居た。。。。。


 側にはあーちゃんを縛っていた二人の魔法少女も、その辺を飛んでた他の魔法少女達も全員居なくて、すごく痛かった頭痛も不思議ともう平気。




「。。。エホッエホッ!みこ、ぉ姉。。。ちゃん?」


「もう大丈夫よあーちゃん、今回復魔法かけるから少し眠りなさい?」




 私は、意識を取り戻したあーちゃんに睡眠魔法をかけるおやすみのキスをする。いつもはオデコや頬っぺにチュッ♪ってスルのに、何故かついあーちゃんの柔らかな唇を奪ってしまう。


 そしてそのまま睡眠と回復の魔法をかけながら、あーちゃんの魔力を大量に吸ってしまった。。。。。



「ハァ、ハァ、ハァ。。。フフフ、フフフフフフフフフ♪」



 私達は姉妹なのに、スゴく悪いことをしてる。。。頭では分かってはいたけど、やめられなかった。

 しかもそれがスゴく可笑たのしくて、あーちゃんの魔力を尽きるギリギリまで吸い取ってしまったのに、みこは笑いが止まらない♪



「ウフフフフフフフフフフフフ♪あーぁ。。。あーちゃん?大好きょ♡」



 長い永いキスの後、まるで今までの自分自分みこじゃ無かったみたいな、そんな不思議な解放感が私の中には満ちている♪



「いやいや、すまないすまない♪

 まさかものの数秒で10体が全滅とは、ボクはキミのことを過小評価していた様だね?クリムゾン・セカンド♪

 というわけで、お次はコレでどうだい第二ラウンドといこうじゃないか?♪」



 そんな大人なキスの甘い余韻に浸る間もなく、再び不快な声がする。。。ワラワラ、ゾロゾロと揃いも揃って湧く魔法少女ゴキブリどもが気持ち悪い。



「。。。フン♪いいの?一残らず、殺すわよ?」


「アッハハハハハハハハハハハ♪

 良いね!その眼!!!魔法少女同胞達を虫ケラ程度としか思っていない、キミはそんな眼をしている♪もし本当に出来るものならば、是非ボクの人形達を壊し尽くして見せてくれ♪


 さぁ逝け!ボクの可愛い魔法少女ムスメ達、自分の有用性をボクに示せ!!!」



「「「「了解、殲滅ヲ開始シマス」」」」




 数を頼りに集る魔法少女ゴキブリを一人、また一人と叩き潰しながら、みこは思い出したことがある。


 あのドクター?とか言う人みたいな人間のことを、確かアニメではマッドサイエンティスト腐った生ゴミって呼んでいた♪




 ************




「。。。。。ぅん、命、お姉ちゃん?」


「アラ、まだ寝てていいのよ?あーちゃん」


「お姉ちゃんさっきの!さっきの人達は!?」


「フフ、大丈夫ょ。。。もう全部終わったわ」


「良かった。。。???命、お姉ちゃん?お姉ちゃんの魔法のドレス、色が。。。」


「あぁ、コレ?なんだかちょっと汚れちゃったみたいね♪きっとお洗濯でもすれば、元に戻ると思うわ」


「。。。お姉ちゃん、本当に大丈夫?」


「えぇ、もちろん♪ドレスはこんなに汚れちゃってるけど、逆になんだか清々しい気分よ?♪さぁあーちゃん?そんなことよりお家に帰るまで、もうしばらく眠りなさい。。。」


「待って!命お姉ちゃん。私、お姉ちゃんが心ぱ、ンッ!!!!!命、お姉。。ちゃん。。。」


「フフ、おやすみなさぃ。。。私の誰だか知らない妹ちゃん可愛い可愛いあーちゃん。。。。。」




 月が蒼白く、とても綺麗だったその夜。かつて日本と呼ばれた魔法少女達の楽園に、鮮血色の雨が降った。

 ビチャビチャ、ボトボト、グチャグチャと。生けるモノ総てに等しく降り注ぐその生臭い惨劇の雨は、やがて世界を覆い尽くし人々は遠く無い未来に再び思い知る出すであろう。



 漆黒のドレスを身に纏いし、闇へと堕ちた魔法少女の恐怖可愛さを。。。。。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

闇堕ち魔法少女の世界征服(ワールドブレイク)〜お姉ちゃんがスゴイ魔法少女だったからって、妹も大人しくカワイイ魔法少女になると思ったら大間違いなんだからね! 22時55分 @keep-left

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ