足手纏いも同伴者もいない

洞窟の天井は高く、スパロは高さを気にすることなく動けた。彼に襲いかかっているのはバッドバットと呼ばれる蝙蝠型の魔物である。頭上を飛びまわり、頭上から攻撃を仕掛けてくる。


くそっ。全然当たらねぇ!


スパロは苦戦していた。地面からでは天井付近にいるバッドバットに攻撃出来ないのだ。スパロは弓矢は持っていないし、遠距離形の魔法は使えない。こういう時こそ頼りになる仲間がサポートしてくれるのだが、


「なんでお前は攻撃しないんだよぉぉぉ!」


あーちゃんは避けるのみで攻撃に参加してこない。


「おー、頑張れー。」

「ねぇ?俺の戦闘スタイル知っているよな?俺、今ピンチなの。代わりに戦ってくれよ。」

「ええー。私がやったらつまんないじゃん。」

「そうだけどっ!手伝ってくれてもいいじゃねぇか!」

「断るー。一人で何とかしてねー。」

「人でなし!」


なんとかするかしかないか。


スパロは目の前の敵に集中することにした。あーちゃんは本当に手助けする気がないのだろう。生き残るためには自分でこの状況を打破しなければならない。


攻撃を避けながら、スパロは至極冷静であった。ぐっと視野が広がった気がした。あーちゃんのことは思考から外す。きっと自分で対処できるから。


視覚情報を淡々と整理分析する。暗視魔法のおかげで暗闇でもよく見える。ふと、壁面の岩が目に飛び込んだ。


カチャリ、とスパロの頭の中で何かの鍵が開いた。


ならば実行するのみ。



足元に磁場魔法をかけて、固定しながら壁面に向かって駆ける。が、磁場魔法は高度な上にスパロの専門ではない。すぐに重力に負けて足が壁面から離れそうになった。


でも、それでいい。


固定が効かなくなるその瞬間にスパロは壁面を思いっきり踏み込んだ。素早さから踏み込みに切り替えられた身体強化により、スパロの体が高く宙に浮く。洞窟の広さを考えた動きに無駄はない。


あとは攻撃するだけだ。


跳ぶと同時に体をひねり、同じ高さにきたバッドバットをナイフで切り裂く。下方への警戒しかしていなかったバッドバットは素早く壁に走ったスパロの動きを捉えられなかった。また、バッドバットは空中という自らに有利な場所から攻撃をするため、突然の近接戦を苦手としている。


なすすべもないバッドバット達を両手に持ったナイフで倒し、スパロは着地した。


息を短く吐いて再び洞窟の天井を見上げた。空中に跳んでも、スパロの動きは速さを保っていた。


即興にしては上々じゃねぇか?


六匹いたバッドバットはいまや一匹に減っていた。

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うちのギルドマスターが凄すぎる 三ツ巴 マト @mikankatu

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