有効なる道草
「よし!依頼も早く終わったことだし、明日はさっさと帰ろう!」
焚き火を目の前に、スパロが高らかに宣言した。早く帰りたい。早く帰って自負に厄介事を持ってくるギルマスと別れたい。
「そりゃ無理だ。」
「何故っ?」
「怪しまれるだろ。」
「確かに。」
その希望は呆気なく散った。
コイツ、ただの幼女のフリしていたんだよな。忘れてた。
「だから、近場の洞窟に行くぞ。」
「うん、なんで?」
「この近くの洞窟近辺でモンスターの目撃情報が多数でている。小型のダンジョンの疑いがあるからついでに調査に行くぞ。」
「つまりはギルドのお仕事か?」
「そーゆーこと。さぁ、明日は早いぞ!」
「おー。」
気の抜けた返事をすると、身の回りの後始末をしてスパロはテントに潜った。正直に言えば、今日の全力疾走で体が疲れてしまったのでもう帰りたい。が、逆らうことができるはずもない。できるだけ寝ようと瞼を閉じれば、すぐに眠りについてしまった。
翌朝、テント越しに叩き起こされたスパロはあーちゃんの後ろをとぼとぼ歩いていた。目的地を知るのはあーちゃんのみ。道なき道を大人しくついていった。
二人はやがて崖下に出た。そこでは洞窟がぽっかりと口を開けて二人を待っていた。入り口は蔦に覆われていて、不気味な雰囲気が漂っている。
「ここか?」
「ここだ!」
「調査か?」
「調査だ!」
「承知した!」
「よろしい!ついでに攻略もするぞ!」
「……攻略もか?」
「攻略もだ!ギルドを経由して冒険者に依頼するのが面倒くさいし時間かかるからな!」
「了解。」
普通、ダンジョンが発見されるとギルドから冒険者に依頼が下りる。冒険者達はあらかじめ調査された情報を元に攻略するのだが、その情報なしに攻略しようというのだ。洞窟の形状すらわからない状態での攻略は過酷だ。
まぁ、コイツならそんな心配もないんだろうな。というか、その気になれば自分で世界のダンジョンを全て管理出来そうだもんな。冒険者ってなんのためにいるんやら。
「よし!じゃあ入るぞ。魔導カンテラはお持ちかな?」
「暗視魔法使うから。大丈夫だ。」
「流石、身体タイプの魔法はお手のものだね!」
「まぁな。……で、俺が先に入るのか?」
「当たり前だろ?」
「はいはい、わかりましたよ。」
「はいは一回。」
「母ちゃんかよ。」
やれやれといった顔でスパロは洞窟に入って行く。暗視魔法の小さな魔法陣を両目に輝せている。その後ろをヒョコヒョコとあーちゃんが付いて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます