魔法(2)
「『魔法』……。」
「といっても私が教えられるのは基盤になる初級魔法だけですけどね。でもそれを知ってるのと知らないのでは大きく差が出る代物だよ。」
そういうとロニエは立ち上がって、外に繋がる扉を開ける。
「何度も移動させてごめんね。魔法は家の中だと危険だから外で教えるよ。」
「じゃあチヅレも呼んできていい?」
戦闘中にチヅレが魔法を知らない状態で使ったら驚いてしまう。それを防ぐ為にチヅレにも魔法について知っておいてほしいのだ。その意図を汲み取ったのか、先に出て待ってるとロニエは承諾してくれた。
そうと決まれば急いで自分の部屋へ戻る。扉を開けるとチヅレがベットの上で鳴いていた。
「きゃう〜ん!わわんっ!」
チヅレ、と声をかけると凄まじいスピードでこちらに走ってくる。
「わんわんっ!わんわんわん!」
少し前から起きていたのか。私が居なくなっていて不安になっていたのだろう。
「ごめん、遅くなりました。起こして一緒に行けばよかったね。」
「くぅ〜ん。」
頭を撫でて持ち上げる。その状態のまま外に飛び出しロニエのもとへ辿り着く。
「おはよう、チヅレ君。……なんか不機嫌じゃない?」
「あはは…そんな事ないよ。ね、チヅレ。」
ぷいっと顔を合わせようとしてくれないチヅレ。これは完全に怒ってらっしゃる。
「そ、そんな事より魔法を教えて?」
この雰囲気を抜け出すべくロニエにそう催促する。
「そうだね。じゃあまずは実際に魔法をみせるから、ちゃんと見ててくださいね?」
ロニエが深呼吸をする。目を瞑って歯を食いしばる。そしてロニエの深呼吸がハッキリと聞こえる様になったその時。
「……『オム』!」
そう叫んだ直後、ロニエの掌の上に1つの炎が揺らめいていた。紅く、透き通ったとても綺麗な炎。本来炎が苦手なはずのチヅレですら興味津々に炎を眺めていた。その炎に目を奪われ、視界がそれを離さない。炎に触れようと手を伸ばす。
「熱っ……!」
「な、何してるの!?」
ここでやっと正気に戻る。吃驚したロニエは急いで炎を消し、やれやれと私の火傷した指の手当てをする。
「触ったら熱いに決まってるでしょ?炎なんだから。」
「いや、炎が凄い綺麗でさ。気付いたら手を伸ばしてたんだ。」
まさかそういう魔法!?と言うとそんな訳ないでしょと軽くあしらわれた。
「……で、今のが基盤の初級魔法の1つ。炎系の魔法『オム』。」
「凄いね、それを唱えれば私も出来るの?」
「ううん、まだ出来ない。魔法っていうのは使うのに条件が有るんだ。」
「わふぅ?」
チヅレが物凄く真剣に話を聞いている。まさかチヅレも魔法を習得しようとしている?
「その1、まずは『理解』。魔法には一つ一つにちゃんとした意味があるの。その意味を理解すればするほど魔法の威力や効力が大きく、広くなっていくの。」
私が唱えても魔法は打てないっていうのは私が魔法について理解していないってことか。なるほどと心の中でメモを取り、続きを聞く。
「でも100%理解を深めるのは到底無理だと思う。超一流の魔法使いでも90%に届くか届かないかの所ですから。その2は『統一』。やり方は人それぞれだけど集中すること。魔法を使うにはそれなりの体力と精神力が削られるから、その為にね。」
よく見ると先程魔法を使ったロニエの額には少量ではあるが汗が浮かんでいた。
「それで最後にその3、『表明』。発動する魔法をどのように動かし、なんの為に発動するのか。その意思を詠唱する魔法に込めるの。これもしっかりとやらないと威力も効力も下がってしまいます。」
話によると威力は下がるが無詠唱でも打てることは打てるらしい、威力は下がってしまうが。
「理解ってどうやってすればいいの?」
「街にある図書館とかに行けば魔法についての本もあるだろうしそれを読んだりすればいいんだよ。」
街を歩いている時に図書館は確かにあった。後で行こうと思いつつ、他にも気になっていることを聞く。
「初級魔法はあといくつあるの?」
「あと4つですね。『オム』の他に『シモン』『ウィル』『イリヤ』『ティフォ』の4つが加わった計5つです。」
「ティフォ……?偶然なのかな。」
「偶然じゃないよ。この初級魔法の詠唱はそれぞれの神様の名前を借りているんです。」
今更だけどごめんティフォ、ホントにちゃんと神様だったんだね。そんな事を考えていると「ちゃんと神だよ!」と不貞腐れるティフォの声が聞こえた気がした。
「そうだ、もう1つ覚えておいて欲しい魔法があるんだ。物とか人の情報を知りたい時に使う魔法なんですけど、『ノウ』という魔法です。」
この魔法は簡単に使えるらしい。調べたい対象に触れ、『ノウ』と唱えれば解析結果が出てくるという。早速自分の身体に触れて集中し少しばかり時間が経った頃に、魔法をゆっくりと唱える。
「……『ノウ』!」
この世界はフィクションです。 @nanashino_
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