おまけEND
第88話:ちーとだいまほうつかいリンカ=ラビアン
あらゆる可能性と結末を見た大魔法使いリンカ=ラビアンは頭を抱えていた。
結局、どの世界でもみんなが一緒に幸せになることはない。
誰かが幸せになれば、誰かが我慢する。終いには歴史だって捻じ曲げられて、そもそも出会うことさえなかったことにされてしまう。
自分も自分とて選択を間違うと、ロクな結果にはならない。
(まぁ、山奥のロイドさんとのラブラブ生活は良かったかなぁ……って! いやいやあんなのダメだって! みんなを犠牲にしてるんだから。ああ、でも野獣なロイドさん、ちょっとゾクゾクしちゃうなぁ……)
と、そんな不埒な自分へ、自ら頬を叩いて一喝。
あれが一番だめだめな結末だと自身へ言い聞かせる。
(私はロイドさんが好き。だけどみんなもロイドさんが好き。そんなみんなを私も好き。だったら、もう! やるっきゃない!)
リンカは一世一代の大魔法の発動を決意する。
【次元連結魔法:メイオウゼーライマ】――時間や空間を捻じ曲げて、あらゆる可能性を一つにする禁断の魔法。
ぶっちゃけむちゃぶりである。禁忌にもほどがある。
さすがは“ちーとだいまほうつかいリンカ=ラビアン”である。
「次元解析完了、準備良し! ……冥王の力を今ここに……! みんなで幸せに! そぉーれっ!」
魔法の杖に輝きを宿して、それを地面へ叩き付ける。
輝きは一瞬で世界を、次元を、時間を包みこみ、捻じ曲げ、こねくりまわして、無理やりくっつけて、そして――
「あ、あれ? ここは……?」
次元を連結した新しい世界へ真っ先にやってきたのは、ロイドと結婚をしたモーラだった。
「うにゃー……? ここどこにゃ?」
次いでトリントンの女王ゼフィも召喚されてきた。
「リンカ!? これなんなの?」
メイガ―ビーム工房の代表となったオーキスも。
「わぁ、大集合! てか、リンカ禁断の次元連結魔法つかっちゃんだぁ。もうこんなことするリンカは魔女だよ、魔女。あはは!」
サリスはけらけらと笑っている。このサリスはどのサリスか分からないが、魔女の方ではなさそうだった。
「な、なんだこれは!? 皆は俺の妻で、いったいぜんたいこれはなんなんだ!?」
最後にロイドが召喚され、彼は明らかに動揺していた。
そんな彼をリンカはビシィッ! っと指差す。
「あなたは史上最強の、完璧超人! 雷光烈火団元団長メイガ―ビーム工房総工場長ハイエルフ復活の起源の男で憲兵で裏の勇者のロイドさんっ!」
「そ、そうだ! 俺は雷光烈火団の元団長で、メイガ―ビーム工房の総工場長で、ハイエルフ復活の起源となった男で、憲兵で、裏の勇者だ! なんだこれは、どうしてこんな状況に!? そもそもなんでこんなに記憶がごちゃごちゃなんだぁー!」
狼狽るロイドへリンカは飛びついて、
「みんなも早く早く! ここにいるのはみんなのロイドさんだよ!」
「あは! それ超うける! でも一番はサリス様だよー。ロイドさんはワタシだけが大好きなんだからぁ! きひ!」
「バカ言うんじゃないにゃ! ダーリンは僕だけのダーリンにゃ! うにゃー!」
「冗談じゃありません! ロイドさんは渡しません! もう我慢なんてしたくありませんっ!」
「ちょっとみんな! ああもう……ロイドさんはあたしのものだよっ!! 誰にもあげないよっ!」
四人の見目麗しい女性に囲まれて、ロイドは嬉しいような、少々窮屈なような。
いや窮屈なんて、ぜいたくすぎる! まったくコノヤローである。
「リンカ! これはなんだ! なんなんだぁー!」
「てへ!」
「てへって、リンカ、おまえなぁ!」
「良いじゃないですか。これでみんなハッピー。これからはみんなを幸せにしてくださいね、ロイドさん♪」
これぞ始まり。
あらゆる次元が捻じ曲げられて造られた、新たな世界。
おじさん冒険者ロイドのハーレム物語がここから始まる! のかもしれない(笑)
おしまい
***
これにてDSS本当に完結です! ありがとうございました。
現在新作準備中です。掲載された際はよろしくお願いいたします!
近日公開を予定している「ようじょお酒にはまる」へ彼らもちょこっと出演させてます。
もしよかったらご覧ください!
パーティーを追い出された元勇者志望のDランク冒険者、声を無くしたSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される シトラス=ライス @STR
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