栗の木の塔

第2話

　かちこちと時計の音がなっている。

　お気に入りのカフェでコーヒーを飲みながら仕事をしていた。

「はぁー」

　大きなため息をつく。

　店内には私とマスターしかいないからか、やけに大きく聞こえる。私は橘 桜子というもので小さな会社の記者だ。

　この仕事が天職とは思えないが、やりがいのある仕事ではあり、私のなりたかった仕事であるので頑張っている。しかし、頑張るだけでは文は書けない、かれこれ一時間以上は悩んでいた。

　記事の内容は決めており、

　記事の内容を説明するとこんな感じだ。

　2月21日の夜、国内では知らない人はいないほどの大手企業の社長である月城透さん(46歳)が知人女性とホテルから出てくるところをスクープされる。有名企業とはいえ一般人の彼の不倫がここまで取り上げられるのには理由がある。月城社長はテレビなどでも馴染みの人物であり著名な人であった。また、ただの平社員から会社を立ち上げ財を築いてきた1流の経営者であり、多くの若者の憧れの的であったからだ。それだけではなく、彼は、愛妻家であると多くの人が認識していたのも理由に挙げられるだろう。

　彼の不倫現場をスカープした記者がいるとは聞いていたが本当だったとは驚きだ。

　先ほども説明した通り、彼は愛妻家としても知られていた。それはなぜか、彼が会社を立ち上げたばかりの時はそれはそれは貧乏で大変な暮らしを送っていたらしい。

　少したって事業がうまくいき金持ちになってからも妻やその家族のことを第一に優先するほどだ。これはあくまで噂なのだが、彼が平社員をやめたのは妻と子が好きすぎたかららしい。

　なんでも、平社員時代に国外の姉妹会社に転勤を言い渡されたことがあるそうだ。

　しかし、奥様が第一子を生んだばかりので、産後の肥立ちが悪く、連れて行けるような状態ではなかった。しかし、家族とは離れたくなかった彼は、仕事を辞め、自らの会社を立ち上げる。そうして出来たのが今の彼の会社、というわけだ。