さようなら、ラチ男。

ほかのエッセイでも触れたけれど、うちにはもうラチ男はいない。

2月5日、中古車屋さんに引き取られた。

そして、私たちはとともに帰ってきた。


車内を空っぽにされて、店の駐車場に置き去られたラチ男。

思い出すと今でも涙が出る。


夫のM夫くんに、さっそく新しい車を運転するように言われて軽く動揺した私は、心ゆくまで別れを惜しむ余裕がなかった。

もっと、ラチ男をナデナデしてあげたかったし、チュウだってしてあげたかった。


204006キロ。

ラチ男の走行距離だ。

約13年、ラチ男は満身創痍になっても、がんばって走ってくれた。


M夫くんが新車で買った車だったけど、最後には新米ドライバーの私のお守りという重大任務も担ってくれた。


私はラチ男の膝に乗ってお出かけする。

最初はナビがなくて、わけのわからない遠くまで連れて行かれたり、重篤なケガを負わされたり、ダメダメドライバーのお守りは大変だったと思う。


本当に、いろんなところに行ったね。

ラチ男のおかげで行動範囲が飛躍的に広がって、楽しかった。


まだ結婚前の私たちのデートも見守ってくれた。

孤独な長距離運転での熱唱も聞いてくれた。

実家を引き払った時の涙の運転も受け止めてくれた。


買い物の荷物運び、お疲れ様。

病院にも連れて行ってくれた。

とぼとぼ歩いているM夫くんを拾いに行ったこともあった。


毎日の生活に、そして人生の節目節目に、いつもいっしょにつき合ってくれた。


大好きなラチ男、おいて来ちゃってごめんね。

今はもう、鉄に戻ってるのかもしれないね。


長い間、ありがとね。ずっと忘れないよ。


そして、本当にお疲れ様でした。

次のお役目をもらうまで、どうか安らかに。


***


25話の区切りを持って、このエッセイは完結とします。

車や運転の話は、また別のエッセイでちょこちょこ出すと思います。よろしくお願いしますm(_ _)m

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T田ラチ男に乗って。 たまきみさえ @mita27

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