自分は学生時代はもちろん今も常々モラトリアムを感じている人間です。
皆さんも関係を変えたくない、変わりたくないという気持ちを大なり小なり抱いたことがあるでしょうか。
モラトリアムは現在、そして未来に過去を続けたいという気持ちですよね。
この小説は先輩と後輩の二人がたくさんの過去を引きずりながら、現在へ、そして未来への願いへたどり着く物語です。
これは「ずっとこのままでいたい」というモラトリアムのお話。
これは「ずっと一緒にいたい」というモラトリアムのお話。
不純で爛れた二人だからこそたどり着いた回答は、きれいでも正しくもないかもしれないけれど、だからこそ惹かれるものがあります。
とっても不純で純粋な彼ら二人でしかできないモラトリアムのお話を、是非最後まで読んでください。
最後に。後輩ちゃんエロ可愛すぎる。
まず初めに言っておかなければならないことがある。
それは「この物語は関係性の物語である」ということだ。
最初の数話を読んで心をすり潰された人よ、ちょっと待って欲しい。一度、最後まで読んでみてはくれないだろうか。
確かにこの『先輩』というやつは、度し難いクズであり、とんでもなく愚かなやつである。なんなら後輩もとびっきりの愚か者かもしれない。それはそう。事実だし。先輩は極刑。
先にも述べたが、この物語は関係性の物語である。
だからこそ、一度最後まで読んで欲しいのだ。
この二人の、どこまでも不純で、けれどどこまでも純粋な関係性の、その変化を見届けてはくれないだろうか。
読んでいて苦しいかもしれない、吐きそうになるかもしれない。きっとモヤモヤした感情が膨れ上がるだろう。けれど、最後にはきっと、ああよかった、と思えるはずだから。
我々読者は所詮外野でしかなく、先輩に対して抱いた憤りなんかは欠けらほども物語には干渉し得ない。だから、我々が勝手に幸だ不幸だとラベリングしてしまうのは避けたいと、そう思わされる名作です。
最後に。これはレビューとは関係ないのだが、やっぱり先輩は極刑だ。
早よ結婚しろや。
追記
できれば「関係性の物語」とするのも避けたかったのだけど、私の語彙では上手く言い表せませんでした。
ともかく、ともかく、この『先輩』という男、凄まじいまでの愚かである。関わった女性と俺の敵だ。どうにか滅したい。もし私が高尚な僧ならはま「破ァ!」の一言で眩い光と共に消え去りはしないだろうか?もはや魔の類である。
そんな愚魔先輩とそれに負けず劣らずの愚かである後輩との爛れ焼けたようなセフレ以上恋人未満の日々を丁寧に綴った名作。
完結に近づくほどこの先輩が許しがたくなる。だが読み終えた後こう思わざるを得ない。
「私は許そう。だがこいつが許すかな!」
放たれたトミーガンの銃口からは一輪の美しい花。まるで手品。そう、手品なのだ。分かりきったタネに当然のように騙されて、そこに生まれる小さくも重い感情を噛み締めるような。
まあ読者という名の外野の憤りがどうであれ、この二人がそれでいいなら何も言うまい。どこまでも子供のように純であまりにも擦れてしまった不純を享受していくのならそれに私は拍手をしよう。
二人の結婚式には是非とも読んで欲しい。ライスシャワーをなぜさせて欲しい。その時は的確に新郎の目を狙おう。