第4話 呪いにかけられた
「へぇ〜、木がねぇ・・・」
ニヤニヤ笑いながら文士郎は缶ビールを置いた。
「呪ってやるって言われてウオさんは本気にしちゃったわけ? それ、夢っしょ!」
文士郎は俺を小馬鹿にしつつ缶ビールをあおっていく。相変わらずペースが速い。
「まあ、俺が『呪いのギター』の話をしたのが悪いんだろうけど・・・にしても、ウオさんがすぐ感染し易い単細胞だってのは分かってたけどここまで単純とは思ってもみんかった」
文士郎はケラケラ笑っている。
「どーせ俺は単細胞だよ」
ちぇっと俺は舌を鳴らす。
「俺は・・・あれはいい夢だったと思ってる。あの森に立ったとき身体中に光が集まってすげぇ気持ち良かったんだ。癒されていく・・・そんな感じで・・・」
「へぇー、夢の中で浄化されてきたんだ」
「そう、光を浴びて足はしっかり土を踏みしめて森のエネルギーを取り込んで、未知のものに触れられそうになったあの感覚・・・」
「何か降りてきましたか?」
「うん、そんな気がする。だからすぐとび起きて・・・」
「いい曲ができたんだ?」
「まあね」
「いいなぁ、早く聴きたいなぁ」
「ああ、そのうちな」
本当にいい曲ができたと思っていた。今まで書いた中で秀逸といっていいほどだ。自信があった。誰にでも誉めてもらえると思っていた。
ところが、それを見事に覆したのはなんと目の前にいる文士郎だったのだ。
スプルース〜奏での木〜 とし @toshokanzume
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