第11話

 ヤマバクはオイナリサマの両頬に手を当ててぐいっと持ち上げた。


「今、目の前に何がいますか?」


 質問の意図が分からない。


「ヤマバク……?」

「そうです。わたしがいます。これがどう言うことか分かりますか?」

「?」

「守り抜いたんですよ!オイナリサマはジャパリパークを守り抜きました!じゃないと、わたしはここにいません!勝手に最悪を想像して、勝手に泣いて、勝手に変な夢に引き籠って!オイナリサマは勝手過ぎます!」


 ヤマバクはオイナリサマの脇に腕を入れて、持ち上げるようにして無理矢理オイナリサマを立たせる。


「わたしと一緒にジャパリパークを廻るんです!そして、知ってください!ジャパリパークは今もたくさんのフレンズ達が暮らしているんです!何もないなんてことはないんです!」

「守り……抜いた……?」

「あ、でも、昔の方が凄かった部分はありますけど……ううん、今からでも遅くはありません。昔よりもっと凄いジャパリパークにするんですよ!みんなの協力があればきっと出来ます!だから、一緒に行きましょう!」


 ヤマバクの言葉にオイナリサマは涙を流したまま微笑み、自分の頬に添えられたヤマバクの手を取った。


「ああ……私のしてきた事は無駄にはならなかったのですね。教えてくれてありがとうございます。あなたのおかげで本当にやるべき事に気が付きました。だからこそ……」


 オイナリサマはヤマバクの手を放し……


「あなた共には行けません」

「!?」


 オイナリサマがヤマバクの肩を押すとヤマバクの意思や行動と関係なく滑るように離れていく。


「オイナリサマ!?どうして!?」


 ヤマバクは必死に駆け寄ろうとするが、その距離は縮むどころかどんどん広がっていく。


「これは罪なのです。ありもしない幻にすがってしまった罪。私は罪と向き合わねばなりません」

「なっ!?」


 涙を拭ったオイナリサマは意思の籠った力強い目のままヤマバクから背を向ける。

 いや、オイナリサマは背後にいた存在と向き合った。


 それはきっとヤマバクがここに来たときから……

 それ以前よりもずっと前からそこに存在していたのかもしれない。


「オイナリサマ!必ず迎えに行きます!どんなに大変でも!必ずです!だから……だから!!」


 ヤマバクはオイナリサマに向かって叫ぶ。


「セルリアンなんかに負けないで────」



 オイナリサマはヤマバクが無事この世界から旅立った事を確認し、目の前の存在に向き直る。


 先程までは漆黒の空間に数多のセルリアンの目が現れる。

 今まで対峙してきたどんなセルリアンよりも強大なセルリアン。

 この世界そのものとも言うべき存在になりつつあるそれに向かってオイナリサマは立ち向かう。


「もう私は引き返せないところまで来てしまいました。だからこそ、守護けものとして!!この身をもって封じます!!」


 ──────────────────


 あれから幾日経過しただろうか。

 オイナリサマを助ける目処が立たないまま、何故かずっと一緒にいるラッキービーストと共にオイナリサマがいるであろう場所を見詰めていた。


 だが、それも今日で終わる。


「お願いします!!私と一緒にオイナリサマを助けに行ってください!!」


 フレンズの力を引き出す不思議な御守りを携えたヒトと言うケモノが幾人かのフレンズと共にこの地を訪れた。


 頭を下げるヤマバクにそのヒトは力強く言う。


「……その為に来た」


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OTD~Saved Japari Park~ 空想現実主義 @ruikuroud

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