5.第三の足跡


 砂。

 砂砂砂砂...。

 砂。

 すなすな。


 砂漠だった。


「虎威さん...指輪壊れたかもです...」

 虎威さんから貰ったこのアイテム。


[クーラーフィグ]

 効果.温度調節(マイナス).貯水


 温度調節してくれているならば、この暑さは何だ...

 クラクラする...


「ここらへんじゃ、もう指輪じゃあ調節しきれないみたいだな...」

「ああ...なるほど...」

「とりあえず、絶対それ外すなよ、死ぬから」


 あ、そっか、指輪ありきでこの暑さか。

 冗談抜きで死にますねぇ...


 ーーー悲劇は1日前。


 ジャングルと砂漠の境目にあったと言う、虎威さんの拠点は。

 ぶっ壊れていた。

 というか、ぺしゃんこだった。


「え...なんで...?」

「多分、あれだろうな」

 虎威さんは、砂漠側の山の方を指す。


 ...山?


 いや...え?



 なんだあれ。


「ちょ、ちょっと望遠鏡貸してください!?」

「ん、はいよ」


 望遠鏡。名前、Lvを調べられるという必須アイテム。

 僕は持ってないけど。


[ヒュージ-グレッション][Lv78]


「何ですかあれ!?」


 超絶巨大な亀(のようなもの)。


「前から居たんだよ、でもまぁ、敵対的じゃなかったから...まぁいいかなって」


 敵対的じゃない...?ならなんで拠点はぶち壊れているのだろうか。


「あれって...」

 ヒュージくんの上空を飛行する、何か。


[アイスヴォルグ][Lv12]

[アイスヴォルグ][Lv73]


 うわ...

「虎威さん...あれは?」

「あれは敵対的なやつだな」


 ってことは...

「あのドラゴンみたいなやつと、ヒュージくんの戦いに拠点が巻き込まれた...

 ってことですか」

「...みたいだな、あの亀に踏み潰されたかな?」


 まーじか。

「仕方ない、本当ならここに移動用のアイテムがあったんだが...」

「え?じゃあまさか...」

「徒歩で砂漠抜けます」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁあああ」


 ーーー


 という事だった。

 今は、本拠点。つまり、草原の拠点へ向かっている。


「お、次のオアシス見えて来たぞー」

「くっ...天国...」


 砂漠。

 メニューでは[レクトアイランド]

 としか表示されていないけれど、ならば砂漠ゾーンとでも言うか。


 砂漠ゾーンは、本当に水が無い。

 オアシスをまわりながら草原ゾーンまで行かなければならないのだ。


 指輪は、水に浸ける事で貯水ができる。

 そして、体に水分が足りなくなったら自動摂取、便利...っちゃ便利だ。

 ちなみに、水鉄砲みたいに放出する事もできる。


 だが食料は...

 ジャングルで取った木の実やらは一瞬で茶色になるし...

 指輪なかったら僕たちも一瞬で干し肉だな。

 石なんかフライパンみたいになっている。

 そう、という事で。


 焼き肉だな。


 ーーー


 この世界では、食料の手に入れ方は2つ。

 植物から木の実などを取ったり、モンスターや動物の死体から肉などがドロップする、いわば採取。

 ジャングルに居た頃は、ずっと木の実だった。


 そして、宝箱などから食料が出る、取得。


 そもそも宝箱なんてものがあることを知らなかったけれど、虎威さんによれば洞窟などにあるらしい。

 けれど、食料を集めるという目的のみではとても効率が悪いので、採取した方が早いとも言っていた。


 そして、これは少し違うけれど、調理。

 今のところ虎威さんが発見している調理方法は2つ。

 加熱、そして合成。


 加熱は、例えば肉などの加熱調理可能な物を、一定以上の温度の所に設置する事で調理が始まる。


 まず、オアシスから汲んできた水で自然界のフライパン、つまり巨大な石を洗う。

 虎威さんは洗う必要ないだろと言ってたけど...いや...うん。


 ここは灼熱地獄なので、15秒もすれば水が蒸発する。

 さらに30秒もすれば元の温度に戻る。


「虎威さん、もういいですかねー」

「おーいいぞー」


 持ち物から、木の棒で肉を取り出す。

 そして、石の上に設置。


 調理可能な温度になると、タイマーが現れる。

 温度が高ければ高いほど早い。

 ちなみにここだと16秒。


 完成だ。


 肉汁がしたたっている。

「うまい...けど」

「うまいんだけれどねぇ...はぁ」


 このくそあつい中で焼き肉とか地獄である。


 肉は美味いんだけど...


「さ、行こうか少年」

「はい、あ、ちょっと待ってください」


 危ない危ない、水取り忘れるとこだった。

 水か尽きたらほぼゲームオーバーみたいなものだ。


 と、水を汲んでいると。

「あ、駄目だ。今日はここで終わりかな」

「え? あ、そっか」


 砂漠ゾーン。

 日が出ている間は灼熱地獄だ。

 だが日が落ちたら。

 極寒地獄である。


 さらに、[ヴォルグ]というモンスターが大量発生するため、夜は外出禁止だ。

 ただ、オアシスは、温度がある程度固定されていて、モンスターも近寄らない設定らしい。

 つまり、夜はオアシスにいなければ死すのだ。


 虎威さんが簡易テントをクラフトする。


 ちなみに、テントや松明などのレシピは僕も取得済みだ。

 これは、一回材料を集めれば解放される、比較的簡単な解放方法だったので

 虎威さんに協力してもらったお陰で一瞬だった。


「よし、できたぞ」

 簡易テントが2つ設置される。


 テントは、一人しか入れず、回収不可能な代わりに

 温度が外の温度から+-10まで調節できる。

 この中なら、快適に朝を迎えられるのだ。


「じゃ、虎威さん、おやすみなさい」

「じゃ、明日な」



 ーーー



 眠い。

 そりゃまあ歩き歩いた(?)から当たり前だけど、この世界はどうも色々曖昧だ。

 スタミナのような物はゲームにありがちだけれども、ここでは肉体依存らしい。

 僕はかなりインドア派だから体力はあまり無い。

 それにこの指輪だって、体感温度を変えてるのか周りの空気の温度を変えてるのかもわからない。

 ついでにいえば、水も飲んでる訳じゃないし...

 どうやって摂取してるんだよ怖いよ...






 ...ん?


 足音。


 虎威さん...外出は駄目だって自分で言っていたのに...


 はぁ...俺も喉乾いたし、水汲むかな。


 テントから出る。


 ...は?


 足跡。

 草原とは違う方向に延びていた。


 ちょ、虎威さん何処に行くつもりだよ。


「え?...」


 虎威さんのテント。

 いなくなっていない。

 若干透けて見えるけれど、虎威さんはいた。


「っ!?虎威さん!!!」

 テントを開ける。

「...ん?どうした?ふぁあ...」

「いました、居たんですよ!」

「え...何が?」

「生存者ですよ! 人間!!!」


 足跡。

 確実に靴だ。


「...!?何!?誰どどどこ!?」


 虎威さんの脳も覚醒したらしい。


「ほら、あっちです」

「...本当だな...これは?」


 一枚の手紙。


「手紙?生存者のですかね」


 だとしたら...

 すごいすごいすごい!!!


「俺たち意外にも...」

「居たんですね...人間...」


 その手紙には、こう書いてあった。






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ゲーマーズサバイバル 録青蛾 @rokuseiga

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