4.後悔と過去
ゲマズ4
殺す。
命を奪う。
虎威さんが?
僕は問いかける。
「ああ、ほとんど同じ事をした」
「ほとんど...?」
困惑する。
どういう意味だろうか。
「実は、この世界に来た人間を三人知っている。君と同じ境遇の人だ」
僕と...同じ?
僕のような人間?
「何でわかったかと言えば...キルログってわかるか?」
「は、はい。なんとなく」
キルログ。
プレイヤーが死んだタイミングで、それを他のプレイヤーに通知するシステム。
「あるんだ、このゲームにも」
「じゃあ虎威さんはそれを...」
「うん、見ちゃったんだ」
一人目は、僕がジャングルを抜けかけた頃。
「鳥風さんって人だった。最初はどういう意味か分からなかったよ」
二人目は、塔の目の前についた頃。
「多分、外国の方だったね。この時、これがキルログだって気づいてしまった。
それで、僕は気づいたんだよ。キルログには座標が出てる」
「何処だったんですか?」
「海岸だった」
三人目は、海岸に引き返していた途中。
海岸に着いた頃だった。
「見ちゃったんだ」
見てしまった。
残酷な。
何も持たず、自然の摂理に飲み込まれる人間を。
「助けられなかった。弓をあと三秒早く構えていれば...どうだったか」
目の前で、HPを削り切られた。
「だから僕はさ、決めたんだよ」
決めた。もう死ぬ人間を見たくないと。
「確かに、死んだらどうなるかなんて分からない」
もしかしたら帰れているかもしれないしね。
と、虎威さんは言った。
「海岸で、待っていれば、次のプレイヤーがやって来るとね、考えたんだ」
「じゃあ、塔を見たことあるっていうのは...」
「そう、結論は引き返したから、だよ」
見殺しにしたくない。
救いたい。
少しでも順応できた俺が。
先人の意思を受け取った俺が。
救うんだ。
「三人手遅れになった後じゃ...ただの自己満足でしかないんだけれどね」
手遅れ。
自己満足。
...そうだろうか。
僕は、思った事を。
直接吐き出した。
「自己満足なんかじゃ...ないですよ」
「...」
「虎威さんのお陰で...僕は生きてます」
「だけど...」
「僕を救ってくれたじゃないですか」
「君は...俺をカッコいい奴だと思うか?」
当たり前だ。
「はい。思います」
だって、助けてくれた。
だって、生かせてくれた。
ヒーローだ。
「ありがとな」
虎威さんは、一瞬うつむくと、
「さ、拠点に向かおう」
「日が暮れる前に」
「...はい!」
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